2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14397
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
網干 貴子 山形大学, 農学部, 准教授 (20746705)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食害応答 / イネ / アミン / ジャスモン酸 / トビイロウンカ |
Outline of Annual Research Achievements |
イネでは病原菌感染に対して、多様なジテルペン化合物やサクラネチンがファイトアレキシンとして増加するが、病原菌に対する応答に比べると、食害に対する化学的応答はあまり明らかとなっていない。昆虫の食害によりイネ体内で増加する未知化合物を探索したところ、イソペンチルアミンを見出した。本年度は主に、イソペンチルアミンが昆虫に与える影響を評価した。 イソペンチルアミンのバイオアッセイには、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)とクサシロキヨトウ(Mythimna loreyi)を用いた。イネ幼苗の茎を切断し、切断部をイソペンチルアミン水溶液に浸けて吸わせた。これをトビイロウンカに吸汁させ、生存数の変化を観察した。イソペンチルアミンを吸収させたイネをトビイロウンカに与えたところ、実験開始から2日間は通常のイネを与えた場合と変化がなかったが、3日目以降は生存率が低下した。一方、クサシロキヨトウにはイソペンチルアミンを添加したイネ葉を与えて、数日間観察した。しかしながら、幼虫の成長や生存率の変化は確認されなかった。 また、イネ以外の植物からイソペンチルアミンが検出されるか調べたところ、同じくイネ科のトウモロコシの幼苗においても、ジャスモン酸噴霧によりイソペンチルアミンの蓄積が誘導されることが分かった。トウモロコシではイソペンチルアミンの他に、アミノ基をもつm/z 530(ESI、positive)の未知物質が食害やジャスモン酸噴霧により増加することを見出した。トウモロコシ幼苗においても、昆虫の食害によりアミン類の蓄積に変化が起きていると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、当初の予定通り、植食性昆虫に対するイソペンチルアミンの影響を明らかすることができた。また、イソペンチルアミンが他のイネ科植物にも含まれていることがわかり、トウモロコシではイソペンチルアミンの他にも食害に応答する未知のアミンの存在が示唆された。以上のことから、本課題については順調に研究が進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
イソペンチルアミンと食害により誘導される他の防御代謝物の相違点を明らかにする。また、イソペンチルアミンは他のイネ科植物にも含まれていることや、トウモロコシから食害に応答する未知のアミンの存在が示唆されたので、イネ以外のイネ科植物の食害応答におけるアミンの役割を調査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により学会や一部実験が中止になり、そのための費用を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。この分の予算は、当初予定していなかった来年度の実験(トウモロコシからの未知アミンの同定など)に必要な試薬や器具の購入に使う予定である。
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