2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14400
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
伊藤 晋作 東京農業大学, 生命科学部, 助教 (70608950)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダイズシストセンチュウ / グリシノエクレピン / 孵化 / 誘引 / phenanthroline / 硝酸イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はダイズシストセンチュウ防除を目指し、その生活環の中でシストセンチュウ特異的な現象である孵化と誘引現状に着目し、孵化、誘引制御物質の創製とその機能解析、および誘引現象を制御する遺伝子の同定を目的としている。本年度はまず、これまでにスクリーニングによって見出していたダイズシストセンチュウ孵化促進物質候補化合物の特異性および活性の向上を目指して構造活性相関研究を行った。これまでに見出していたリード化合物の構造の一部を削除もしくは他の官能基で置換した化合物を購入しその活性を検討したものの活性の強化には至らなかった。一部の構造を削った化合物については活性が消失したことから現在引き続き構造活性相関研究を行っている。また、ダイズシストセンチュウは適温、湿潤条件下にてインキュベート後(以下孵化処理と呼ぶ)孵化促進物質を認識することで孵化する。これまでの研究で既存の孵化促進物質であるグリシノエクレピンとphenanthrolineでは処理後の応答が異なっていることを見出していたためその違いに関して詳細に検討を行った。孵化処理後経時的にグリシノエクレピンを処理したところ、孵化処理直後に処理した場合も1日後に処理した場合でも孵化時期への影響はなかった。このことからダイズシストセンチュウは孵化処理後何らかの変化を起こすことによってグリシノエクレピンを認識するようになると考えられた。加えてダイズシストセンチュウ誘引に関与する遺伝子の取得を目指して誘引時に変動する遺伝子の取得を行った。これまでに取得したRNAseqにて宿主根への誘引時、硝酸イオンへの誘引時に共通して変動する遺伝子、宿主根誘引時のみに変動する遺伝子について、RT-PCRにて再現性を確認したところ、複数の遺伝子で再現性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は構造活性相関研究による新規孵化促進物質の創製を目指したものの、リード化合物よりも高活性の化合物を見いだすことは出来なかった。部分構造のみでは全く孵化活性を示さなかったことから全体構造がかなり重要であると考えられ、現在のリード化合物の構造からは高活性な孵化促進物質の創製が難しい可能性がある。そのため構造活性相関研究を続けるとともに、新規のリード化合物の取得を行っているが、未だ高活性な孵化促進物質の創製はできていない。次年度は今年度創製した化合物を用いて実験を行う予定であったため、やや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き高活性な新規孵化促進物質の探索を行うとともに、ダイズシストセンチュウによるグリシノエクレピンの認識機構の解析を行う。また、今年度得た誘引時に変動する遺伝子についてRNAiによるノックダウン実験を行うことで誘引に関与する遺伝子の探索を行う。 グリシノエクレピンは30年以上前に見出された物質であるが、どのようにダイズシストセンチュウに認識されているのか?に関しては全く解析されていない。ダイズシストセンチュウの宿主認識機構を解析するにあたりグリシノエクレピンの認識時期や部位、などの情報はダイズシストセンチュウ防除法の確立のためにも必要である。そこで特にグリシノエクレピンの認識機構の個体レベル、遺伝子レベルでの解析にも注力して進めていきたい。
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Causes of Carryover |
適切な執行に努めて研究を行ってきたが、物品の効率的な購入により年度末に若干の差額が生じたため。残額は次年度の消耗品費に追加し研究を進める。
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