2019 Fiscal Year Annual Research Report
Application of complementary and alternative medicine for breast cancer based on kinetic characteristics of food components
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18K14416
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鳴海 克哉 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90746752)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳がん / モノカルボン酸トランスポーター / 乳酸 / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
モノカルボン酸トランスポーター(MCTs)は、乳酸やケトン体などの代謝中間体の輸送に関与する膜タンパク質である。がん細胞では主にMCT1およびMCT4が高発現し、過剰に産生された乳酸を細胞外へ排出するポンプの役割を担う。したがって、MCTsはがん治療の標的として注目されており、MCT阻害剤は抗腫瘍効果が期待される。本研究では、これらの膜タンパク質の活性に対する食品成分の阻害効果を明らかにし、乳がん細胞の生存・増殖との関連性を評価することにより、乳がん補完代替療法としての食品成分の有用性を検証することを目的とした。はじめにMCT阻害作用を有する食品成分をスクリーニングするため、エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん細胞株MCF-7を用いて、種々の食品成分の乳酸輸送に対する阻害効果を評価した。フロレチンやモリンをはじめとしたいくつかのポリフェノール類は乳酸輸送に対して強力な抑制効果を示し、濃度依存的にMCF-7細胞の細胞生存率を低下させた。そこで、抗エストロゲン製剤タモキシフェンによるMCF-7細胞の増殖抑制効果に対するこれらのポリフェノール類の相乗的な効果を期待し検討を進めたところ、予想に反してMCF-7細胞に対するタモキシフェン感受性はこれらのポリフェノール類の併用により低下した。これまでの検討により、ER陽性乳がん細胞株におけるMCTの阻害、特にMCT4を阻害することによりタモキシフェン感受性が低下することを見出しており、そのメカニズムとして一部低酸素誘導因子(HIF-1α)やエストロゲンシグナルの増強が関与することが示唆された。以上、MCT阻害作用を有するポリフェノール類はER陽性乳がん細胞に対して増殖抑制効果を示すが、一方でタモキシフェンを含む抗エストロゲン療法の感受性を低下させる可能性が示された。
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