2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14418
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
青木 綾子 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (60610368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大腸オルガノイド / 胆汁酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腸管オルガノイドを用いて二次胆汁酸が腸管上皮幹細胞に及ぼす影響を解明することを目的とする。昨年度は、小腸オルガノイドに対するコール酸及び二次胆汁酸の添加効果を検討し、二次胆汁酸の1つであるリトコール酸に、幹細胞の割合を増加させる可能性があること、またその作用にTGR5受容体が関与している可能性があることを明らかにした。今年度は、大腸オルガノイドに対する各種胆汁酸の添加効果を調べるとともに、リトコール酸の摂取がマウスの大腸上皮の幹細胞に与える影響を解析した。マウス大腸からクリプト画分を調製し、マトリゲル中、R-spondin、Wnt3a、Nogginを産生するL-WRN細胞の培養上清を含む培地で培養することで大腸オルガノイドを誘導した。誘導した大腸オルガノイドは7日に1回植え継ぎを行うことで維持した。植え継ぎを行ってから3日後の大腸オルガノイドに、胆汁酸(コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸)を100 μMとなるように添加して4日間培養した。RNAを抽出後、cDNA合成を行い、幹細胞マーカーであるLgr5と、分化マーカーの遺伝子発現をリアルタイムPCRにより解析した。その結果、予想外にリトコール酸の添加によりLgr5の遺伝子発現が低下し、杯細胞のマーカーであるMuc2および腸管内分泌細胞のマーカーであるChgaの遺伝子発現が増加することが明らかになった。続いて、0.1%リトコール酸を含む固形飼料をLgr5-EGFPノックインマウスに2週間自由摂取させ、大腸上皮細胞におけるLgr5-EGFP陽性細胞の割合を、フローサイトメーターを用いて解析した。その結果、0.1%リトコール酸の摂取により、大腸上皮におけるLgr5-EGFP陽性細胞の割合が減少する傾向にあることが明らかになった。以上から、リトコール酸は予想に反して大腸上皮においては幹細胞を減少させ、腸管上皮の分化を促進する方向に働く可能性があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度途中に炭酸ガスインキュベーターが故障したが、修理不可であったため、腸管オルガノイドの培養ができない期間が生じた。また、今年度後半に動物飼育施設の工事があったため、3ヶ月間ほど動物実験ができない期間が生じた。これらのことから今年度予定していた実験の一部を行うことができず、研究の進捗にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Lgr5-EGFPノックインマウスを用いて二次胆汁酸の投与効果を検討するとともに、大腸オルガノイドを用いた検討を実施する。 1. マウスへの二次胆汁酸の投与が腸管上皮幹細胞に与える影響と分化に与える影響の解明 引き続き、小腸および大腸の腸管上皮に対する二次胆汁酸の効果を検証する。Lgr5-EGFPを発現するノックインマウスに二次胆汁酸を経口投与し、小腸および大腸のLgr5遺伝子発現および腸管上皮細胞の分化マーカーをリアルタイムPCRにより解析する。また、腸管上皮細胞における幹細胞および分化細胞の割合を、フローサイトメーター解析や組織切片の作成により明らかにする。 2. マウス大腸オルガノイドへの二次胆汁酸の添加が腸管上皮に与える影響とその作用機構の解明 マウス大腸オルガノイドに二次胆汁酸を添加し、腸管上皮の分化状態を遺伝子発現および抗体を用いた染色により解析する。また幹細胞機能に与える影響を評価するため、二次胆汁酸で刺激した腸管オルガノイドを植え継ぎした際に形成される腸管オルガノイド数を比較する。加えて、腸管上皮の制御に関わる胆汁酸の受容体を調べるため、各種胆汁酸受容体のアゴニストおよびアンタゴニストの添加効果を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度途中に炭酸ガスインキュベーターが故障し、修理が不可だったため、腸管オルガノイドの培養ができない期間が生じた。また、今年度後半に動物飼育施設の工事があったため、3ヶ月ほど動物実験ができない期間が生じた。これらのことから今年度予定していた実験の一部を行うことができず、次年度に研究費を繰り越す必要が生じた。次年度の使用計画については、引き続き、Lgr5-EGFPノックインマウスを用いて二次胆汁酸の投与効果を検討するとともに、大腸オルガノイドを用いた検討を行う。
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