2018 Fiscal Year Research-status Report
複数の枝作り酵素を欠損させた米澱粉の構造と酵素間相互作用から導く澱粉構造制御機構
Project/Area Number |
18K14438
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
クロフツ 尚子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 研究員 (30583330)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 澱粉 / 枝作り酵素 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、3種のイネ澱粉枝作り酵素(Branching Enzyme; BEI, BEIIa, BEIIb)の相補関係を明確にすることである。3種のBEは、組織による発現強度・相互作用する相手・形成する枝の長さが異なり、そのバランスが澱粉の枝の長さ・位置・頻度に影響し、澱粉特性や米の用途を左右する。いずれかが欠損すると、他のBEが機能の一部を相補すると推測されるが、澱粉構造の制御機構を解明するためには、BEの相補関係を明確にする必要がある。 本研究では、二つのBE を同時に欠損させることで、残り一つとなったBEの役割を明確に示す。具体的には、be1/be2bとbe1/be2aイネ変異体を用いて、1) 澱粉の構造と特性、2) 酵素間相互作用の変化を明らかにする。「どのBEが、どの酵素と相互作用して、どの長さの枝を形成し、その結果、澱粉の特性がどう変わるか」を明確にする。 H30年度は、be1/be2bイネ二重変異体を用いて澱粉の特性(アミロース含量・難消化性澱粉含量・糊化温度)を明らかにした。その結果、既存のジャポニカ米のアミロース含量が約20%であるのに対し、be1/be2bのアミロース含量は約52%と既存の品種の最高値を10%以上も上回った。また、ジャポニカ品種の玄米粉の難消化性澱粉が澱粉の約0.2%と微量であるのに対し、be1/be2bの難消化性澱粉は澱粉の約35%を占め175倍も増加した。ジャポニカ米の糊化ピーク温は60℃に満たないが、be1/be2bの糊化ピーク温度は約77℃であり、高糊化温度の親系統であるbe2bの70℃を上まわった。これらのことから、be1/be2bのアミロペクチンは長い二重螺旋を形成することが推測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
be1/be2bイネ二重変異体を用いて、アミロース含量・難消化性澱粉含量・糊化温度の測定を行った結果、BEIとBEIIbの両方が欠損するとアミロース含量や澱粉の消化性が大きく変化したことから、BEIIaはBEIとBEIIbの役割を相補することができないことが明確になったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度はbe1/be2aイネ二重変異体の澱粉特性を明らかにする。また、ゲル濾過法とBlue-Native-PAGE活性染色法を行い、澱粉生合成関連酵素の複合体の分子量や酵素活性の変化を明確にする。さらに、be2a/be2b変異体の単離を試みる。
|
Causes of Carryover |
今年度の研究が順調に進み、次年度に農作業や実験補助を行う人を増員することでさらに研究が進展するとことが見込まれるため、今年度の物品費を次年度の人件費に上乗せして使用する。
|