2018 Fiscal Year Research-status Report
AP2/ERF型転写因子によるイソキノリンアルカロイド生合成系の発現制御
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18K14439
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山田 泰之 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (20770879)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 転写活性 / 細胞内局在性 / AP2/ERF型転写因子 / ハナビシソウ形質転換体 / 植物培養細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、グループIXサブファミリーに属するオウレンのAP2/ERF型転写因子群(以下、GIXE)の機能解析を行った。具体的には、GIXEがベルベリンの生合成に関わる酵素遺伝子の転写を誘導する活性を持つことを、生合成酵素遺伝子の上流の塩基配列(プロモーター領域)にレポーターを付加して転写の活性を測定することが可能なレポーターアッセイ系を用いて明らかにした。また、GIXEが細胞内のどこに局在しているかについて、GFPとの融合タンパク質を利用して解析し、その細胞内局在性を明らかにした。特に、GIXEが転写を誘導する活性を持つということは、ベルベリンの生合成酵素遺伝子プロモーター領域とのダイレクトな相互作用を示唆するものであり、実際、プロモーター領域中に存在する既知のAP2/ERF型転写因子の標的配列(GCC-box)に非常に近い配列に対して変異を導入すると、転写の誘導活性が減少することも確認した。これは、より直接的なGIXE転写因子とDNAとの相互作用を今後解析していく上で非常に重要な知見であると考えている。 さらに、GIXEを過剰発現させたハナビシソウ培養細胞株、ならびにGIXEにSRDX配列(Hiratsu et al., 2003)と呼ばれるペプチド配列を付加し、恒常的に遺伝子の発現を抑制するキメラリプレッサーとして発現させたハナビシソウ培養細胞株を作出し、解析可能な状態にまで生育・維持させた。今後、これらの形質転換培養細胞におけるGIXEの発現、およびイソキノリンアルカロイド生合成酵素遺伝子群の発現解析やアルカロイドの生産性に関する分析を行う上で重要なリソースを確立できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オウレンの培養細胞を利用した一過的発現系を用いることで、GIXE転写因子群のレポーターアッセイや細胞内局在性の解析を迅速に行うことができ、GIXE転写因子群のベルベリン生合成系への関与がより強く示唆された。また、一過的発現系における転写因子同士のネットワーク解析もある程度進めることができた。一方で、ハナビシソウの形質転換体作出については若手研究の助成を受ける前から準備を進めていたが、所属が変わった影響もあり、再度作出をやり直すことになった。幸い、1年で解析可能な状況までリカバリーができたので、研究の進捗状況への影響はそこまで大きくないと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果において、GIXE転写因子群がベルベリン生合成酵素遺伝子のプロモーター領域に結合し、下流の遺伝子の転写促進を行っている可能性が示唆された。これを踏まえ、GIXE転写因子群とDNAとの結合性を、EMSAやChIP assayにより解析していく。すでに大腸菌によるリコンビナントタンパク質の発現誘導条件の検討と、タンパク質の精製まで進んでおり、EMSAはすぐに着手可能である。 また、ハナビシソウ形質転換体の解析については遺伝子導入の確認を行った後、各イソキノリンアルカロイド生合成酵素遺伝子群の発現解析やbHLHやWRKYといった他の転写因子遺伝子の発現解析を行う予定である。さらに、各種イソキノリンアルカロイドの生産性をUPLC-MSにより解析し、GIXE転写因子の発現によるアルカロイド生産性の向上が見られるかどうかを検討していく。 これらの研究成果をまとめて論文発表を行うとともに、余裕があれば、ハナビシソウの内在のAP2/ERF型転写因子の解析についても進め、オウレンのGIXEとの比較も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
現所属の研究室には、レポーターアッセイ系の解析に必要な機械がないため、旧所属の研究室や業者から借りることでまかなう必要があった。将来的にも自身で使用する頻度が非常に高い機械なので購入を検討していたが、やや高額(120万円)なため、繰り越しが可能な基金制度の利点を最大限に生かして次年度に購入できないかどうか、消耗品などの支出を別の予算で補うなどの試行錯誤をしていたため、やや高額の次年度使用額が生じた。年度初めの予算額の見通しが不安定なため機器購入リストにも記載していなかったが、2019年度もある程度研究室の予算の見通しが立ったので、現在、機械の購入準備を進めており、これに繰越金のすべてを充てる予定である。
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Research Products
(4 results)