2018 Fiscal Year Research-status Report
Breeding analysis for pleiotropic effects on canopy temperature and related traits in bread wheat
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18K14443
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山崎 裕司 鳥取大学, 乾燥地研究センター, プロジェクト研究員 (00794281)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パンコムギ / 遺伝資源 / キャノピー温度 / 光合成 / 蒸散 / QTL / QEI / 収量性 |
Outline of Annual Research Achievements |
パンコムギの生育期のキャノピー温度(葉温度)は、収量と負の相関があり、一般に低いキャノピー温度を示す系統は高収量であるとされている。これは、気孔を常に開き蒸散量を高く保つ形質が、同時に二酸化炭素を多く取り込み光合成を盛んに行うと考えられるからである。平成28~29年度に行われた先行研究において申請者は、高い多様性をもつ多重合成コムギ派生集団(MSD)を用いて、このキャノピー温度と収量の負の相関を確認した。さらに、この集団のジェノタイピングデータより合成コムギの親を特定したところ、特定の親を持つ系統間で強い負の相関を示した。本研究ではこの特定の親を持つ系統を用いてRILを作成し、キャノピー温度と収量に関する複数のQTL解析を通し多面発現効果を持つQTLのネットワークの解明を行う。また発見されるQTLを通し、気孔開閉、光合成活性、収量の因果関係を生理学的解析によって明らかにすることにより、ネットワークの解明に用いる。 一年目である平成30年度は、①MSDを用いた生理学的二次スクリーニング、②BC1F2(種子)からの自殖と純系化を実施した。またこれ以外に③同時進行で行われている別研究の平成29~30年度のスーダンでの圃場データを基に、再度キャノピー温度と収量の相関性を確認することを実施項目に加えた。その結果、①②の項目において、多少の遅れが生じているものの、③を行ったことで、平成31年度以降に行う予定になっている圃場での実験(第一回試験播種:令和元年度11月)に使用する分離集団系統の決定を行うことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度(平成30年度)において、上記の3つの計画を基に行った。 ①MSD系統の生理学的二次スクリーニングについてであるが、鳥取大学乾燥地研究センターに平成28年度末に納入された光合成測定装置(LI-6800)の習熟に焦点を合わせて行った。習熟については完了し、現在パンコムギのGSII期(キャノピー温度を測定している時期)における最適な測定条件(環境設定)検討に時間を要しており、MSD系統を用いた測定に至ってはいない。 ②BC1F2(種子)からの自殖と純系化であるが、平成31年4月現在において6系統のタルホコムギ由来のDゲノムを持つBC1F4までの種子を得ている。しかしそのうちの2系統の生育不良が起こっており、そのうちの1系統は100以上の分離集団のBC1F4が得られていないことから、前の世代に戻って最適な環境で栽培する必要性がある。生育不良の原因は、その2系統を生育した時期が通常より異なる冬場の気温変化のことのため、適当な環境を作ることで改善できると思われるが、もう一度前の世代に遡って生育する必要があるため、計画より遅れている。 ③平成29~30年度のスーダンでの圃場データについてであるが、使用したMSD247系統及びコントロール・チェックの合計250系統の収量とキャノピー温度との相関は-0.27(平成28~29年度は-0.35)であった。また両年度ともに高い相関を持つ系統が②で作成している6系統のRILの中に存在することを再確認したことから、次年度からの圃場試験を行う分離集団候補の選抜は行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年次計画の2年目の平成31(令和元)年度は、④RILを用いたスーダン圃場での評価試験の開始、および⑤RILを用いた生理学的実験を予定している。 ④については、②及び③で得たデータをもとに、高い相関を持つタルホコムギ由来のDゲノムを持つ分離集団(RIL)を用いた圃場実験を開始する。そのための自殖による純系化を、今後も鳥取大学乾燥地研究センター内施設で進める。11月より開始するスーダンでの圃場実験の環境は、今まで試験を行ってきたスーダン・ワドメダニのARC(スーダン農業研究機構)内の圃場に加え、スーダン国内の気象条件が異なる圃場(ドンゴラにあるARC敷地内の圃場を想定)の2か所以上での圃場栽培試験を行うことを目指し、当該機関と交渉を行っている。特に、ワドメダニより平均気温が低いドンゴラでのデータを加えることで、異なる温度環境を意図した、QEI(QTL by environmental interactions)を最終年度までに観察することが可能となる。 生理学的実験については、鳥取大学乾燥地研究センターで行う予定である⑤を行う前に、平成30年度内に計画された①MSD系統の生理学的二次スクリーニングを優先的に進める。特にキャノピー温度に大きくかかわる蒸散に関わるデータおよび葉の温度、また光合成速度などを中心に測定することで、メカニズムを含めた解析を確立する。また⑤については、スーダンでの圃場実験の経過の報告を待ってから、①で確立された方法を用いて生理学的解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
理由:平成30年度にスーダンでの圃場試験を行うことが可能であれば実行するために予算計上したが、播種の時期である11月までに分離集団の種子を用意することができなかったため、残額が生じた。
使用計画:平成31年度では、スーダンでの圃場内での評価実験を、11月より行う予定である。その費用として、スーダン農業研究機構に支払う費用、鳥取大学乾燥地研究センターでの分離集団作成費用、そして本研究代表者のスーダンまでの渡航費用として使用する。また生理学的解析を行う人工気象器の電気代などの解析にかかる経費も予算として計上している。
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Research Products
(1 results)