2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14460
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
三井 裕樹 東京農業大学, 農学部, 准教授 (40613138)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 根の肥大 / 遺伝子変異 / 遺伝様式 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
根の肥大性は農作物の収量や品質に関わる重要な形質であるが、作物品種間における肥大性変異をもたらす遺伝的メカニズムには不明な点が多い。本研究ではダイコンの肥大性が異なる品種間でF2集団を作出し、肥大形質の遺伝様式およびQTL-seq解析による原因遺伝子の探索を行った。‘青首総太’(長円筒形)ב聖護院’(球形)のF2集団の形態評価では、「細長さ(根長/最大根径)」の形質は連続的に分離し中間形質が最も多い正規分布を示した。‘青首総太’(長円筒形)ב守口’(細長円錐形)のF2集団では、最大根径は連続的に分離したが‘守口’ほど細い個体は得られなかった。また、‘聖護院’(大球形)× ‘京都薬味’(小球形)のF2集団では、 ‘京都薬味’に近い小径の個体が多く分離した。 ‘青首総太’と‘聖護院’のF2のうち各親系統に近い形態を示す25個体ずつのバルクDNAライブラリを用いてQTL-seq解析を行った。各ライブラリにつき約23億塩基のシーケンス配列が得られ、既知のダイコンゲノム配列にマッピングした結果、R2染色体上の約35 Mb周辺において、5%水準で有意に‘青首総太’と‘聖護院’のSNPが分化している領域が検出された。このR2染色体30~40Mb領域には約1800個の遺伝子が存在したため、‘青首総太’と‘聖護院’の根部肥大組織におけるRNA-seq解析を行い、根形態変異と関連する遺伝子の検出を試みた。その結果、品種間で発現量の有意に異なる遺伝子が46個検出された。それらのうち、細胞分裂等に関与するいくつかの遺伝子で複数のアミノ酸置換やインデルが存在し、根の肥大や伸長性に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主な目的である、根の肥大性変異に関する遺伝的メカニズムの解明に関して、複数系統を用いた遺伝様式と、具体的な原因遺伝子を検出できたことから、おおむね順調に研究を遂行できたと考える。しかし、令和2年度のコロナ禍の影響を受けてデータの解析や追加実験が予定通りに進められず、十分な成果発表ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究期間である3年を経過したが、進捗状況で述べた理由により、研究期間の1年間の延長を申請した。今年度はこれまでのデータのとりまとめと成果発表を中心に研究課題の総括を行いたい。
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Causes of Carryover |
全体予算はほぼ執行したが、わずかに残額が発生してしまった。残額分は次年度の研究取りまとめにおいて全て執行する予定である。
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