2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムのヘテロ接合度が生産性に与える影響-カキにおける近交弱勢打破に向けて-
Project/Area Number |
18K14463
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
尾上 典之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主任研究員 (50613121)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カキ / 高次倍数体 / 近交弱勢 / ヘテロ接合度 / 六倍体 / GBS / RAD-seq / 果樹育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ゲノムワイドなヘテロ接合度の推定 ゲノムが2セットの二倍体植物と異なり、6セットのカキでヘテロ接合度推定を行うためには、一塩基多型(SNP)においてアレルのコピー数を反映した量的遺伝子型(AAAAA、AAAAAa、AAAAaa、AAAaaa、AAaaaa、Aaaaaa、aaaaaa ;A:参照アレル、a:対立アレル)を正確に推定することが重要である。そこで、次世代シーケンス解析で得た配列情報を量的遺伝子型に変換するため、複数プログラムを組み合わせた解析手順[以下、1)~5)]を構築した。材料には97個体のF1集団(「富有」×「安芸津19号」)を用いた。1)配列情報の取得にはddRAD-seq法(Peterson et al. 2012)、2)配列情報をゲノム上の対応する箇所に並べる工程にはbwa mem:Burrows-Wheeler Aligner program(Li and Durbin 2009)、3)多型情報の取得にはGATK:The Genome Analysis Toolkit (McKenna et al. 2010)、4)遺伝子型の推定にはupdog(Gerard et al. 2018)。得られた遺伝子型の信頼性評価にはpolymapR(Bourke et al. 2018)を利用し、両親の遺伝子型情報を考慮して子の遺伝子型を推定するupdog f1法を用いた場合に、より信頼性の高い量的遺伝子型を推定できることを確認した。得られた量的遺伝子型を用いて標準化ヘテロ接合度(Slate and Pemberton 2006)を計算した結果、F1集団の各個体は0.95~1.1(標準偏差0.018)のばらつきを示した。 2) 生産性関連形質の調査 ddRAD-seq解析したF1集団について、樹勢、雌花の着生、主幹基部の直径等を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた1)ゲノムワイドなヘテロ接合度の推定、2)生産性関連形質の調査についてはいずれも計画通り行なった。令和元年度に完了した生産性関連形質の組合せ平均とマーカー近縁度との関連解析について、次年度に論文投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画を上回って研究を進められる見込みである。最終年度の2021年度は、F1集団について生産性関連形質を調査するとともに、2018年から継続取得してきた生産性関連形質の表現型データとヘテロ接合度との関連解析を実施する。また、次世代シーケンス解析を追加で実施して、当初計画を上回る計4集団を解析対象とすることで、生産性関連形質とヘテロ接合度との関連の普遍性について検証する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による感染リスク軽減のため旅費が不要となったことに加えて、当初の見込みより物品費と人件費を抑えられたため、次年度使用額が生じた。生産性関連形質調査およびゲノムワイドヘテロ接合度との関連解析において、最終年度に追加集団用の次世代シーケンス解析を計画している。解析に供試する集団を増やすことで、生産性関連形質とヘテロ接合度との関連の普遍性について検証する。
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