2018 Fiscal Year Research-status Report
大気水素が紡ぐ植物と放線菌の未知の共生関係の解明と病害防除能力に与える影響
Project/Area Number |
18K14470
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菅野 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10462847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共生微生物 / 植物 / 生物間相互作用 / 水素 / 微生物生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放線菌と植物や他微生物との間の生物間相互作用に大気水素の取り込みが関与する可能性を検証し、放線菌の生態と潜在的な病害防除ポテンシャルに関する基盤的知見を獲得することを目的とする。まず当助成初年度は、以下の研究を実施した。 1.遺伝子組換え株の再作製: 目的遺伝子のPCR増幅確認やガス分析による水素酸化活性を確認した結果、高親和性ヒドロゲナーゼ遺伝子の復元株が正しく作製されていないことが判明した。高親和性ヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損させた破壊株に遺伝子の再導入を試みたが、現在のところ目的の組換え株は得られていない。 2.高親和性水素酸化放線菌の獲得: Streptomyces属放線菌OS2C株の他に、国内微生物寄託機関の純粋分離株の中から、各々Suborderレベルで系統的に異なる放線菌4株の高親和性水素酸化活性を見出した。うち1株はOS2C株と異なり胞子非形成株である。いくつかの株はOS2C株と同様に貧栄養培地で高い水素酸化活性を示す可能性が示唆された。 3.植物接種試験: 無菌土耕栽培したイネに野生株および破壊株を接種し、植物地上部および根の体内、表面、根圏土壌の各フラクションの微生物数をコロニーカウント法により経時的に調べた結果、接種4週間後に破壊株の定着率の減少が確認された。また同様に、高親和性ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター下流にGFP遺伝子を部位特異的に挿入した発現レポーター株を無菌イネに接種した結果、接種4週間後に植物表面で増殖した発現レポーター株のGFP蛍光が観察され、共生時の高親和性水素酸化酵素遺伝子の発現が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科研費採択前に作製した遺伝子組換え株の一つ(高親和性水素酸化酵素遺伝子を破壊株に再導入した復元株)が正しく作製されていないことが判明したため、その再作製に時間を費やした。比較トランスクリプトーム解析やメタボローム解析に着手することは出来なかったが、大気水素酸化能を有する放線菌種の拡大など、次年度以降の展開に向けた予備試験を着実に実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
復元株の作製は難航しており、まずは野生株と遺伝子破壊株を用いて研究計画を遂行する。イネ地上部および根の体内、表面、根圏土壌の各フラクションの微生物数をコロニーカウント法により経時的に調べた結果、野生株に比べて破壊株で生細胞数が少ないデータを得たが、平板培地上でも同様のコロニー数の違いが見られており、大気水素酸化能の欠失は放線菌の形態分化や正常なコロニー形成に影響を及ぼす可能性が考えられた。その場合、コロニーカウント法で植物共生細胞数を評価することは不適と考えられるため、16S rRNAの定量RT-PCRの実施も計画する。他微生物との相互作用や生態分布に関する研究にも着手する。
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Causes of Carryover |
(理由)研究計画の見直しにより、当該年度に比較トランスクリプトーム解析やメタボローム解析を実施しなかったためである。 (使用計画)次年度使用額は、当初の予定通り、実験試薬やガスボンベ当の消耗品費、国内外の学会参加旅費等に使用する。研究の進展状況に応じて柔軟に使用し、助成期間内に全て使用予定である。
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Research Products
(3 results)