2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K14473
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土岐 和多瑠 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (50611406)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 消化共生 / 栽培共生 / 木質 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、カミキリムシ科昆虫について、酵母との共生関係がすでに示唆されているハナカミキリ亜科メス成虫を対象に愛知県及び長野県にてサンプリング、酵母の分離を行った。供試した訪花性ハナカミキリ16属19種のうち、15種より7種の酵母が分離され、それらはいずれも木質を構成する難消化性成分キシロースを分解可能な酵母であった。酵母は産卵管に近接する嚢状器官より得られた。酵母を嚢状器官にもつ種は、持たない種に比べて嚢状器官が大型化していた。これらのことから、ハナカミキリ亜科の多くの種が酵母と消化共生(共生生物が宿主の餌の栄養摂取を助ける共生)にあること、嚢状器官が酵母の運搬器官として発達したこと、およびハナカミキリ種間における酵母の水平感染の可能性が示唆された。 オオキノコムシ科コメツキモドキ亜科昆虫については、台湾にて、日本国内にて酵母と栽培共生関係(宿主が共生生物を育てて食べる共生)にあるニホンホホビロコメツキモドキの近縁種を対象に調査を行った。共生酵母を分離し、成虫を産卵させ、無菌化した幼虫に酵母を与えて飼育し、成虫になることを確認した。これにより、大型の竹の稈と枝の空洞で共生酵母と栽培共生関係にあることが実験的に確認された。当該酵母はキシロースを分解可能であり、難消化性成分を基質として増殖し、餌として消費される可能性が示唆された。 これらのことから、木質依存性のカミキリムシやコメツキモドキは難消化性成分を分解可能な酵母と共生することで、木質を利用可能になった可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、コメツキモドキを対象とした海外調査(台湾)を春と秋の2度行ったため、カミキリムシを対象とした日本国内での大規模な調査があまりできなかった。しかし、今後調べるべきカミキリムシの分類群を明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カミキリムシ科については、ハナカミキリ亜科を中心に木質利用、非利用の種を含めてより網羅的にサンプリングを行う。さらに、幼虫をサンプリングし、樹種、部位、共生酵母との関係を解明する。コメツキモドキについては、ニホンホホビロコメツキモドキと異なる系統を対象に野外調査を行う。
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