2018 Fiscal Year Research-status Report
サンゴ種間での感染率の違いに着目したブラックバンド病大発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K14479
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 俊幸 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (00814526)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サンゴ / ブラックバンド病 / 接触感染法 / 自然免疫応答 / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界中で被害が報告されているブラックバンド病(BBD)のサンゴ種間での感染率の違いに着目して、特定種におけるBBD大発生の原因を解明することを目的としている。平成30年度は、1. BBD人為感染法の確立、2. サンゴ種間でのBBD感染率の比較、3. トランスクリプトーム解析のための効率的なRNA抽出条件の検討を行った。 1. 接触感染により再現性の高いBBD人為感染法を確立した。フィールドでBBDに感染したサンゴを回収し、罹患部を1.5~2.0 cm角の大きさに切断後、サンゴへ接触させた状態でバンド固定することで、BBDの人為的な感染を確認した。2. ミドリイシサンゴ、コモンサンゴ、ハマサンゴへのBBD感染実験を行った。ミドリイシサンゴは、6個体中1個体のみでBBD感染を確認し、感染7日後には死滅した。コモンサンゴは感染率が最も高く、感染実験を行った6個体全てに対して感染を確認した。感染20日後には5個体が死滅した。一方で、ハマサンゴへのBBD感染率は低く、6個体中1個体のみで感染を確認した。また、BBD罹患部の進行も5mm程度に止まっていた。3. サンゴのBBDへの免疫応答を詳細に調べるために、BBD感染部位と未感染部位で比較トランスクリプトーム解析を行う予定である。そこで、ミドリイシサンゴ、コモンサンゴ、ハマサンゴからのRNA抽出条件の検討を行った。サンゴ組織を液体窒素で凍結後、タガネで粉末状に破砕することで効率的にRNAを抽出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再現性の高い人為感染法を確立し、サンゴ種間でBBD感染率に差があることを明らかにした。今年度は、各サンゴ種におけるBBD感染部位の細菌叢比較を行う予定であったが、水槽で飼育していた一部のハマサンゴに藻類が感染してしまったため、実験を行うことができなかった。一方、平成31年度行う予定であったサンゴからのRNA抽出条件の検討は、計画を繰り上げて行うことができたため、当初の計画以上に進展があったと考えられる。以上の結果により、多少の計画の変更はあったものの、研究計画全体としては概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、サンゴのBBDに対する免疫応答を詳細に明らかにするために、BBD感染部位と未感染部位で比較トランスクリプトーム解析を行う。既にBBD人為感染法とRNA抽出法を確立しているため、これらの手法を組み合わせてトランスクリプトーム解析を行い、サンゴ種間におけるBBDへの免疫応答の違いを分子レベルで明らかにしたいと考えている。さらに、平成30年度に行うことができなかったBBD感染部位の細菌叢比較についても同時に行う予定である。
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Causes of Carryover |
各サンゴ種におけるBBD感染部位の細菌叢比較を行う予定であったが、水槽で飼育していた一部のハマサンゴに藻類が感染してしまったため、本実験を行うことができなかった。そのため本実験および解析に必要な費用を次年度に繰り越した。
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Research Products
(5 results)