春植物の代謝フェノロジーに着目した保全技術の開発

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K14483
• Research Institution: National Museum of Nature and Science, Tokyo
• Principal Investigator: 水野 貴行 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (80758772)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 生物有機化学 / 生息域外保全 / 休眠打破

Outline of Annual Research Achievements

早春に花を咲かせ、夏以降は地下部のみで過ごす生活史を示す春植物において、代謝産物の季節変動に着目した保全技術を開発する。絶滅危惧植物であるユリ科春植物カイコバイモでは、秋から春の期間の培土への「ブドウ糖直接処理」と呼ばれる栽培増殖法が愛好家の間で知られているが、科学的な根拠が無い。本研究では、メタボローム解析と組織培養および栽培条件下での外発的糖質処理試験から、愛好家の間で知られている「ブドウ糖直接処理」の栽培増殖法の科学的根拠を探るとともに、ブドウ糖直接処理の保全技術としての有用性と他の絶滅危惧種への汎用性を検証する。
今年度は異なる季節に採集したカイコバイモ球根を用いて、糖質やアミノ酸などを含めた網羅解析（メタボローム解析）を行い、幅広い化合物の季節変動を明らかにした。今後、さらにデータの解析を行い、休眠打破に伴い増減する化合物の候補を絞り込む。特に、10月から2月頃の休眠打破期に著しく変動した代謝産物を抽出し、これらの変動をより詳細に理解するための実験計画を作成し実施する。培養系については、過去に近縁種で実施された際の研究報告を参考に、処理区を設定し、種子の発芽試験を実施した。現在、培養条件下での発芽試験につては経過を観察中である。また、栽培試験からはスクロースおよびグルコース処理が2年生球根の発芽に及ぼす影響について、データを取得した。栽培試験については期間中、毎年実施し、より明確な結果を得られるよう務める。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

異なる季節に採集したカイコバイモ球根を用いたメタボローム解析について、比較的信頼性の高い結果を得ることができたため。

Strategy for Future Research Activity

メタボローム解析の結果から、球根の休眠打破のおおよその時期とそれに関与する候補化合物が推定されたため、今年度はサンプリング時期や対象とする化合物を前年度よりも絞って調査を行う。これにより休眠打破に伴い変動す化合物を明確にする。組織培養および栽培試験については継続して経過を観察する。

Causes of Carryover

次年度以降の代謝解析に関する受託研究費の費用を調整するため。