2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14485
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮坂 隆文 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (80635483)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | オーバーツーリズム / 景観評価 / 合意形成 / 砂漠観光 / 生態系サービス / 伝統的価値 / 保護地域管理 / ランドスケープ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度予備調査を行なったモンゴルのフグンタルン国立公園内にあるエルセン・タサルハイ地域において、近年の環境変化と砂丘の価値認識に関する調査を実施した。 地元住民58名、観光客44名、公園のレンジャー1名、地元政府の国立公園担当1名に対し、対象地域での環境変化とその原因に関する聞き取り、及びSemantic Differential(SD)法による景観写真を用いた砂丘の価値認識調査を行った。SD法では、形容詞対を両極とする(例えば「美しい-美しくない」)多段階評価尺度により対象を評価する。本研究では、景観写真に対し生態系の健全性、レクリエーション性、生産性、総合的価値に大別される14の指標を作成し、それらを5段階で評価する尺度を用いた。景観写真としては、植被率の異なる砂丘景観、すなわち流動砂丘、半流動砂丘、固定砂丘のそれぞれ近景、遠景写真、計6枚を用いた。なお、価値認識調査では被調査者の基本属性も調べた。 まず、環境変化とその原因に関する聞き取りの結果として、対象地域ではオーバーツーリズムにより土地劣化が顕在化していることが明らかになった。例えば、観光用に集められたラクダによる樹木の食害と倒壊、観光用燃料のための樹木の伐採、樹木の減少に伴う砂丘の拡大と水場の減少などである。さらに、行政、観光業者、観光業を営む牧民、通常の牧民、観光客といったステークホルダー間で、問題に対する認識が異なることも明らかになった。砂丘の価値認識調査においては、固定砂丘から流動砂丘にかけて全ての指標が低下する傾向にあった。しかしながら、年配、牧民経験あり、地元住民といった人々の価値認識は、流動砂丘を含む全ての景観に対し相対的に高いことが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モンゴルにおいて砂丘の価値認識が人々の属性により異なることを明らかにした。これは当初の計画通りの成果と言える。さらに、今後需要が増えていくと予想される砂漠観光において、オーバーツーリズムとそれに伴う土地劣化の危険性を示唆する結果を得ることができた。これは、当初の計画で想定していた以上の成果であり、今後の研究をより発展させうるものである。そのため、全体的には計画以上の進捗があったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
もう一つの研究対象地である中国においても、砂丘景観の価値認識調査を実施する。さらに、昨年度及び本年度の成果に基づき、中国の国家砂漠公園の管理について、保護と利用のバランスに着目した調査を行う。 新型コロナウイルスの影響により来年度の調査が難しい場合は、再来年度に延期せざるを得ない。その代わり、成果の論文化を前倒しで進めるほか、まだ国際的にはほとんど進んでいない中国国家砂漠公園に関する研究について、中国語の文献を中心にレビューを行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により参加を予定していた学会が中止となったため、参加費が不要となった。次年度の文献費用に充当する予定である。
|