2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K14485
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮坂 隆文 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (80635483)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 衛星リモートセンシング / オーバーツーリズム / オブジェクトベース画像分類 / 砂漠観光 / 土地荒廃 / 土地被覆分類 / 保護地域管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の中解像度衛星画像を用いた広域解析結果に基づき、特に土地劣化が顕著であったモンゴルのフグンタルン国立公園のエルセンタサルハイ地域を対象として、高解像度衛星画像を用いたより詳細な解析を実施した。 植生が繁茂する夏季を対象に、2009年のGeoEye-1画像と2019年のWorldView-3画像を取得した。昨年度の解析結果をもとに、国立公園全体の中で特に植生が減少していたエルセンタサルハイ地域と、そこから南東に約8 km離れている土地被覆変化の小さかった地域を対象に、サポートベクターマシンを用いたオブジェクトベースの土地被覆分類を行い二時期を比較した。 その結果、エルセンタサルハイ地域では草地被覆率が77.0%から14.3ポイント減少、砂丘は21.5%から13.1ポイント増加しており、樹木本数の顕著な減少も確認された。草地から砂丘へ変化したエリアは、砂丘の外縁部(草地との境界部)や砂丘内部に点在する草地パッチの外縁部に集中しており、砂丘が面的に移動、拡大していることが示された。また、一昨年の現地調査で確認された、観光用ゲル(モンゴルの伝統的な移動式住居)、観光客の車両、轍(車両の走行により生じる裸地)がエルセンタサルハイ地域に集中していることが画像上でも確認された。一方、南部の地域では草地が52.8%から2.2ポイント増加、砂丘が45.0%から2.4ポイント減少と大きな変化は見られず、樹木の顕著な減少やゲル、車両、轍も認められなかった。2009年、2019年の画像撮影日と各年の月別降水量を照らし合わせると、2019年画像の方が植生量のピーク時にやや近いと考えられた。そのため、土地劣化の評価として本解析結果は保守的である可能性がある。以上より、現地で観察された土地劣化の状況がより客観的、定量的に示され、エルセンタサルハイ地域における砂丘拡大の要因が観光活動であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的な流行により、昨年度に引き続き海外調査を実施することができなかった。しかし、現地調査を行えない場合に実施を予定していた、フグンタルン国立公園における高解像度衛星画像を用いた詳細土地被覆解析により、観光活動に起因すると考えられる砂丘拡大を定量的に示すことができた。現地調査は行えていないものの、当初計画からの新たな展開である砂漠観光におけるオーバーツーリズムに関して研究が進展していることから、全体としては「やや遅れている」程度であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、次年度はモンゴルでの調査が可能な見通しである。そのため、当初計画にあるモンゴルのホブド県で調査を行う予定である。ホブド県の砂丘地域にも観光地化されている場所があるが、人口集中地区であり国際空港もある首都ウランバートルからのアクセス性は低い。そのため、オーバーツーリズムは起こっていないことが予想される。エルセンタサルハイ地域と比較することで、砂丘と現地住民の関係性や砂丘の観光価値などが、オーバーツーリズムによりどのように変化するのかも検討することができる。 一方、中国での現地調査は依然として厳しい見通しである。調査を実施することができない場合、リモートセンシング及びGISを用いて国家砂漠公園設置による土地被覆への影響を解析する予定である。国家砂漠公園内の生態保護区や観光区などの各ゾーン、及び公園周辺地域での土地被覆を公園設置前後で比較することにより、砂漠公園が植生を含め土地にどのような影響を与えているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により予定していた海外調査を全てキャンセルしたため。次年度の調査費用に充当する予定である。
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