2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14485
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮坂 隆文 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (80635483)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 衛星リモートセンシング / 景観評価 / 砂漠観光 / 砂風呂 / 中国国家砂漠公園 / 伝統的価値 / 土地荒廃 / 保護地域管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、モンゴル国ビゲル郡において砂丘の利用実態に関する調査を行った。また、中国の宝古図国家砂漠公園が土地被覆に与える影響について衛星画像解析を行った。 ビゲル郡の砂丘は観光資源として利用されており、モンゴル全土から腎臓病患者が集まる療養所も砂丘近くに設置されていた。療養所の患者、観光客、現地の牧民計53名に対し、砂丘の利用方法に関する聞き取り、およびSD法による砂丘の価値認識調査を行った。療養所では常駐する医師の指導のもと、医療目的で砂丘が砂風呂として利用されており、観光客の一部も娯楽として砂風呂に入っていた。牧民からは、家畜のラクダやヤギが好んで食べるHaloxylon ammodendronやKalidium sp.が特に砂丘周辺に生育している、ラクダが休憩場所として砂丘のような暑いところを好むといった砂丘の有用性が指摘された。一方、牧民には自然に良くない行動をすると悪いものが返ってくるという考えがあり、一部の牧民は砂風呂により病気が砂に入り砂丘が汚されると雨が降らなくなると信じていた。そのため、療養所は閉鎖、もしくは2、3年に一度開くくらいにした方が良いという考えを持っていた。このように、砂丘の価値は立場によって様々であり、文化や生計の観点から意見の対立も見られた。SD法による調査結果は現在解析中である。 宝古図国家砂漠公園内は砂漠生態系の保護や植生回復、エコツーリズムなど異なる管理や活動を行うためゾーニングされていた。公園外を対照区とした差分の差分法により、各ゾーンの植被変化をLandsatの時系列画像を用いて分析した。まず、公園設置前は公園の領域内外で植被の変化は同程度だった。公園設置後は、公園外と比較し、公園内で植林や植生回復試験などにより植被が増加していた一方、オフロード車の走行が認められている砂漠体験区や隣接する(柵などで分けられていない)砂漠景観保護区などで植被が減少していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画していた、モンゴルの砂丘の伝統的、観光的価値に関する調査を実施することができた。結果として、地元の牧民と地域外からの来訪者が認識する多様な、一部対立する価値を確認した。また、予定していた中国国家砂漠公園における衛星画像解析も行い、砂漠公園が土地被覆へ与える正負両面の影響を確認した。以上より、「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、新型コロナウイルスの影響により未実施だった、中国における砂丘の価値認識に関する現地調査を実施する。最終的にこれまでの結果を統合し、砂丘と人との関係およびその価値を地域・世代間の比較から明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により予定していた海外調査を実施することができなかったため。次年度の調査費用に充当する予定である。
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