2019 Fiscal Year Research-status Report
Identification of genes and their functions involved in post-zygotic hybrid inviability in Japanese flowering cherries
Project/Area Number |
18K14489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴田 燃海 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 特任研究員 (90809740)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNA-seq / 発現変動遺伝子 / 生育不全 / 植物防御反応遺伝子 / サクラ属 / 染井吉野 / 雑種不和合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
サクラ属の栽培品種‘染井吉野’(Cerasus x yedoensis 'Somei-yoshino')と野生種のエドヒガン(C. spachiana)とを交雑させた際、およそ半数の実生において、本葉の展開後に成長がみられずに枯死にいたる生育不全が現れた。この家系における健全な実生3個体および生育不全実生3個体、野生種ヤマザクラ(C. jamasakura)の健全実生3個体からそれぞれRNAを抽出し、次世代シーケンサーにより発現遺伝子を網羅的に調べた。 合計19,491の遺伝子がいずれかのサンプルで発現していた。生育不全(3反復)と健全な実生(6反復)とを比較したところ、4,258遺伝子の発現が処理間で変動しており、このうち1,653遺伝子が生育不全実生において発現が高くなっていた。生育不全実生において最も発現変動(up-regulated)した遺伝子は、シロイヌナズナのbasic pathogenesis-related protein 1と相同性が高く、植物の免疫反応との関連が示された(InterPro: Allrgn_V5/Tpx-1-related family protein)。この他にも上方制御された遺伝子上位20以内に、外的刺激に対する防御反応に関与する遺伝子が複数含まれていた。また機能解析(エンリッチメント解析)においても、生物的刺激に対する反応、防御反応のパスウェイに関与する遺伝子が、有意に発現増加することが示された。前年度、連鎖解析により生育不全の候補領域を第4連鎖群の240Kbほどの領域に決定しているが、この候補領域においてもLeucine-rich repeatを含む防御反応と関連した遺伝子が軒並み生育不全実生において高発現していた。これらのことから、免疫系に関わる遺伝子の高発現により、雑種実生の生育不全が引き起こされていると予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNA-seqの解析を当初は外注で行うことを考えていたが、それよりも多くのサンプルを次世代シーケンサーにかけられるよう、自前で解析するよう変更した。この解析に時間を要し、当初の計画より少し遅れている。また現在、部位別のトランスクリプトーム解析の外注を中断しているため、そのための費用を次年度に繰り越した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果では、多くの防御関連遺伝子が発現し、これが内因性の免疫として働くことで雑種実生の生育不全を引き起こしていると考えられた。しかし、実際にどの遺伝子が引き金となってこの防御反応が引き起こるのかは分からなかった。今後、前年度の連鎖解析により候補とされた領域において、2つの対立遺伝子の内のどちらに由来する遺伝子が発現していたかを明らかにするなど、発現遺伝子を詳細に調べることで生育不全のメカニズムを解明する。 また、実生の部位ごとにRNAを抽出し、発現変動遺伝子を詳細に解析する。これと合わせ、先の詳細マッピングで候補遺伝子として挙げられたALOG family geneの挙動を正確に把握し、実生の生育不全との関連を明らかにすることを予定している。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンスデータの解析を自身で行うようにしたため、RNA-seq解析にかかる費用を当初の予定から大幅に削減することができた。そこでこの予算で、実生の部位ごとの遺伝子発現網羅解析による生育不全のメカニズムの理解を目指した。ただし実験の遅れから、追加RNA-seq外注は次年度に繰り越しとなった。また差引額にはこれに加え、年度末に参加を予定していた学会のために計上した旅費等が含まれる。 研究の再開後、ただちに上述の部位別のRNA-seqを進める。さらに、このRNA-seqの解析結果をもとに、qPCR解析を行う予定である。
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