2018 Fiscal Year Research-status Report
病害虫拡散予測および制御に関わる順応的最適化システムの構築と社会実装
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18K14493
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
伊高 静 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業情報研究センター, 研究員 (80776336)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナラ枯れ / 被害木抽出 / 被害予測 / 拡散制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林資源環境を取り巻く諸問題は複雑で、木材生産のみならず、生態系サービスへの関心も強まる中、現場における意思決定が難しくなっている。そのような現状で、意思決定をサポートするため、本研究では、病害虫の拡散を把握した上で、その被害を制御するためにどのように環境資源を管理していくかを提案するためのシステム構築を目指している。本研究は、過去の被害履歴や制御履歴のはっきりしているナラ枯れを対象とした。当初は、山形県森林研究研修センター協力のもと、山形県のみを対象とする予定だったが、新潟県森林研究所の協力も得られることになった。平成31年度は、主にデータ収集と、拡散モデル構築に向けたデータ準備を行なった。山形県森林研究研修センターが管理する林地において、無人小型航空機UAV(ドローン)による空撮を行い、高解像度のナラ枯れ画像を入手した。2018年に枯れた樹木を把握するため、8月下旬から9月中旬にかけて空撮を行ない、2017年までに枯れた、葉のついていない枯れ木と、2018年に枯れた葉の付いた枯れ木を、画像上で区別できるようにした。さらに、ドローン空撮に合わせて、現地調査を行い、樹種・直径・樹高に加え、ナラ枯れをもたらすキクイ虫であるカシノナガキクイムシの穿孔数、樹木の生死を記録した。また、基盤地図上で解析していくため、ドローン空撮画像から、歪みを補正したオルソフォトを作成した。オルソフォトから枯れを抽出し、その成果は第130回日本森林学会大会で発表した。この、ドローン空撮画像から枯れを抽出する技術は、本研究のみならず、林地の現状把握等に現場で広く使える手法であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度は、主にデータ収集と、拡散モデル構築に向けたデータ準備を行なった。当初は、山形県森林研究研修センター協力のもと、山形県のみを対象とする予定だったが、新潟県森林研究所の協力も得られることになった。教師データ・検証データとして利用するための継続調査データは、これまで山形県森林研究研修センターより提供を受けていた過去30年分の枯れ現地調査データ(メッシュデータ)に加え、その元になるより詳細なデータを入手した。さらに、新潟県森林研究所からも、過去数十年分の現地調査データ(メッシュデータ)の提供を受けることになっている。また当初は、スペクトルカメラを搭載したドローンによって空撮し、NDVI (Normalized Difference Vegetation Index: 正規化植生指数)により枯れを抽出する予定だったが、今回はドローンに標準搭載されているRGBカメラを利用した。RGB画像で解析できれば、より汎用的な手法を確立できると考え、植生らしさの指標となるVARI (Visible Atmospherically Resistant Index)や、深層学習を用いて枯れ抽出を試み、手法を比較した。RGB画像を使った解析に時間を費やしてしまったものの、概ね予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
山形県、新潟県のミズナラ・コナラ林において、およそ8時期をカバーする衛星画像を入手する予定であり、ドローン空撮画像で得られた枯れを元に2018年の枯れを特定し、それを教師データとして深層学習を用いて時系列枯れデータを構築する。その時系列データからセルオートマトン法を用いた拡散モデルを用いて将来の時空間変動を仮定し、拡散パターンを予測する。セルオートマトン法は、格子状のセルを用いて自然現象を模する離散的計算モデルで、様々な 条件が複雑に関わって拡散する際に、その空間的な拡散メカニズムを記述することを得 意とする。そして、被害費用及び制御コストを、県や市町村が公開している各種統計資料、現地での聞き取り調査をもとに収集し、ナラ枯れ拡散を最小コストで制御するための最適な管理の時空間配置に向けた分析を行う。最終的には、GISを基盤として、上記の結果を地理情報システムと連動させ、出力・可視化する。そして、制御管理計画を県庁に提案する見込みである。
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Causes of Carryover |
当初は空間解析用のソフトウェアを購入する予定だったが、所属が変わったためにアカデミック価格を利用できなかったため、次年度に持ち越して正規価格で購入する。支出が多くなった分は、打ち合わせと調査を一括で行い旅費の支出を抑えるので、次年度使用額に支障はない。
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Research Products
(1 results)