2018 Fiscal Year Research-status Report
森林土壌中の放射性セシウムの存在形態: 事故後6年間の変動と樹木の汚染過程の解明
Project/Area Number |
18K14495
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
眞中 卓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 任期付研究員 (00784703)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 福島第一原子力発電所事故 / 森林土壌 / 存在形態 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年の原発事故により、放射性物質のセシウム137(137Cs)が福島県の森林に大量に飛散・沈着した。樹木の137Cs濃度は、137Cs沈着量が同じ場所でも大きな変動を示していることが知られている。ここで土壌中の137Csの大部分は、粘土鉱物の立体構造に取り込まれ、極めて強く固定されている(固定態)。またこれ以外にも、土壌有機物や粘土鉱物の負電荷に静電的に吸着した「交換態」の137Csなどが存在する。交換態の137Csは、量は少ないものの、比較的樹木に取り込まれやすい。ただしこれまでの福島の土壌研究は、全量での137Cs測定などから安定・多量な固定態に注目したものが多く、交換態に関する情報は限られる。そこで本研究では、福島の樹木の137Cs汚染のメカニズムの解明や将来予測を行うために、土壌中の137Csの存在形態およびその時空間変動を明らかにすることを目的とする。 今年度は、県内の複数の森林で事故以来6年間に渡って採取してきた土壌試料(リター層・鉱質土層)を利用し、酢酸アンモニウム溶液による交換態137Csの抽出実験を実施した。その結果、各試料における全137Csに占める交換態137Csの割合は、2011年8月の時点でも10%(リター層)・6.1%(鉱質土層)であり、リター層・鉱質土層共にその後指数関数的に減少していることが明らかになった。この結果は、時間とともに植物が吸収しやすい形態のセシウムがより少なくなっていることを示しており、樹木の137Cs汚染のメカニズムなどを知る上で重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、交換態137Csの抽出実験を完了させ、その成果を国際誌に論発表することができた。さらに、137Csの吸着に寄与する土壌有機物の組成分析を、予定を前倒しして進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
同じ試料に対し、核磁気共鳴や有機物分解実験などを実施することで、137Csの吸着に寄与すると考えられる土壌有機物の特定及びその時間変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
想定より物品を安く調達することができたため。残額は翌年度の物品費や分析依頼料などに使用する予定である。
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