2018 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化に伴う降水パターンと気温の変化は火山灰土壌の有機物分解を促進するのか?
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18K14497
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
永野 博彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 博士研究員 (40758918)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 土壌有機物 / 乾燥―湿潤サイクル / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地球温暖化に伴い発生する可能性が高いとされる気温の上昇と降水パターンの変化が土壌の有機物分解および二酸化炭素(CO2)放出に及ぼす影響を明らかにするため、土壌培養実験を中心とした調査を行っている。特に、日本の森林に広く分布し、炭素貯留能が高いとされる火山灰土壌を調査対象としている。 1年目は、実験に使う火山灰土壌の選定と適切な培養実験系の確立を目的とした予備実験を主に行った。北茨城の落葉広葉樹林で採取した理化学性の異なる2種類の火山灰土壌を供試土壌に選定した。また培養中の土壌乾燥速度を制御するための予備実験を繰り返し行い、約4週間で乾燥と再湿潤を1回繰り返す処理(Dry-Wet処理)と乾燥・再湿潤を全く行わず水分量がずっと一定の処理(水分一定処理)で培養期間中の平均水分量が等しくなるような実験系を確立した。本実験系の確立によって、「一定期間中の平均水分量が等しい場合でも水分変動の有無によりCO2放出や有機物分解が異なるか?」の定量的検証が可能になった。さらに、選定した2種類の火山灰土壌および確立した実験系を用いて、20℃におけるCO2放出速度を水分一定処理とDry-Wet処理で比較する120日間の予備的な培養実験を行ったところ、培養期間中の平均水分量が同じであってもDry-Wet処理のCO2放出は水分一定処理よりも明らかに多くなることが分かった。また、放出されたCO2に含まれる炭素安定同位体の存在比(δ13C-CO2)を測定したところ、δ13C-CO2はDry-Wet処理と水分一定処理で異なっており、Dry-Wet処理と水分一定処理では分解された有機物の理化学性や滞留時間が異なっている可能性が示唆された。11月からは20℃での培養に加え30℃での培養も開始し、「土壌有機分解およびCO2放出の温度依存性もDry-Wet処理と水分一定処理で異なるか」の検証を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに火山灰土壌の選定と培養期間全体での土壌水分量が水分一定処理とDry-Wet処理で等しくなるような実験系を構築することができた。さらに確立した培養実験系を用いた予備的な培養実験を行い、同じ温度で平均土壌水分が等しい場合であっても、Dry-Wet処理によりCO2放出が増大し、分解される有機物の質も大きく変化する可能性が高いことを明らかにできた。これらの結果には学術的価値の高い情報が含まれていると考えられたため、国内学術会議で成果を発表するとともに論文として取りまとめ国際誌へ投稿中である。以上の点においては当初の計画と同等かそれ以上に進展している。 他方、2つの異なる温度での培養実験は現在も進行中である点や、研究計画に含めている放出CO2の放射性炭素同位体存在比(δ14C-CO2)測定はほとんど未実施である点で当初の研究計画よりも多少遅れているものの、総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2年目は、現在進行中の2つの異なる温度での培養実験を中心に取り組む。CO2の放出速度や放出CO2の炭素同位体存在比の測定を行いつつ、取得データの解析を進め、研究結果を取りまとめる。また必要に応じて、土壌の理化学性や微生物性の分析を行い、温度と降水パターンの複合的変化が火山灰土壌の有機物分解やCO2放出に及ぼす影響についての理解を深める。
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Causes of Carryover |
炭素同位体存在比分析用サンプルの準備作業が当初計画よりも遅れたために、分析可能なサンプル数が少なく、発生した分析費用が当初計画よりも少なかったため。 未分析となったサンプルも、次年度に追加で分析する計画であり、その際に生じた次年度使用額を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)