2019 Fiscal Year Research-status Report
バイオナノファイバー複合化水処理膜創製のための基盤技術の確立
Project/Area Number |
18K14502
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 美智子 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 助教 (30759965)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酢酸セルロース / セルロースナノファイバー / 限外濾過膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酢酸セルロース基材に表面改質を行ったセルロースナノファイバーを複合化させ、透水性と強度を両立した新規水処理膜の作製を目的とした。高透水量と膜強度の両立には、疎水性である酢酸セルロース中において親水性のセルロースナノファイバーが十分に分散することが重要となる。昨年度は、異なるイオンを用いて表面改質を行ったセルロースナノファイバーと酢酸セルロース間の接着力が変化することを明らかにした。本年度はその結果をもとに、作製した複合膜の機械特性や膜特性の関係について検討した。一般的には、高分子基材にセルロースナノファイバーを複合化するとヤング率や強度は増加するが破断ひずみは低下する。一方セルロースナノファイバーの表面改質を行うことで、基材との応力伝達が向上し破断ひずみも増加する例が報告されている。本研究においても、セルロースナノファイバーの表面改質に4級アンモニウムイオンを用いることで酢酸セルロースとの間での応力伝達が効率的に働き、複合膜の機械特性が向上したと考えられる。また、陽電子消滅法による膜構造解析の結果と合わせ、セルロースナノファイバーの添加により膜内の空孔密度が減少したことも機械特性の向上に繋がったと考えられる。親水性のポリマーを酢酸セルロース膜に添加した場合、膜孔径と空孔密度の両方が増加し膜強度も低下することが先行研究で示されている。本研究では、セルロースナノファイバーの表面を4級アンモニウムイオンで修飾することで酢酸セルロースとの親和性が増加し、空孔サイズの増加とともに透水性能が増加したが、分離性能の低下が限外濾過膜の性能維持レベルまで抑えられたこと、さらに空孔密度が減少することで機械強度との両立が達成できたと考えられる。これらの研究結果をまとめ国際学会で発表を行い、さらに論文を国際学術誌に投稿し掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において2019度は、前年度の結果をもとに表面改質セルロースナノファイバーと酢酸セルロースの複合膜の特性評価を行うことを予定した。実際に本年度は作製した複合膜の透水性や構造特性、機械特性について明らかにし、セルロースナノファイバーと酢酸セルロースの親和性という観点から考察を行った。これらの結果をまとめ国際学会で発表を行うとともに国際学術誌に論文が掲載され、計画は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
4級アンモニウムイオンを有するセルロースナノファイバーの抗菌性評価について、セルロースナノファイバー単独での評価を目指す。効率的な評価方法を決定したのち、本研究で作製した複合膜にも展開させる予定である。
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Research Products
(3 results)