2018 Fiscal Year Research-status Report
釘接合部の試験方法の違いが評価結果に及ぼす影響 -実験的検証とメカニズムの解明-
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18K14504
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小川 敬多 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 任期付研究員 (10805021)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 釘接合部 / せん断性能 / 試験方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
釘接合部のせん断性能を調べる標準的試験方法は複数存在しており,それぞれで試験体形状や試験方法が異なる.本研究では,試験方法が異なることによるせん断性能評価結果の違いを明らかにすることを目的としている.平成30年度では,ASTMおよびJASで定められる2つの試験方法でせん断試験を実施し,評価結果を比較した. 両試験方法での大きな違いは,試験体形状にある.ASTMに定められた方法では,一対の主材(木材)と側材(木質面材料)が,一本の釘で接合された試験体を用いる.一方,JASで定められた方法では,一つの主材を二枚の側材で挟み込むように,4本の釘で接合している.すなわち,両試験方法では試験体一体あたりの釘使用本数が異なっている. ASTMおよびJASで定められた方法に従って加力試験を実施した.得られた荷重―すべり量関係をもとに,特性値(ここでは変位0.38mm時の耐力P0.38,降伏耐力Py,最大荷重Pmax,初期剛性K)を算出し,ASTMおよびJASの試験方法で得られた結果を比較した.いずれの特性値でも平均値に有意差が認められなかった.一方,P0.38とKの分散において,JASのほうが小さく,F検定で有意差が認められた.このように分散に有意差が認められた原因として,JASでは釘本数が多く,同一試験体の中でのバラツキによる相殺されたためと推察した. また本研究では,この推察の妥当性を確認するために,シミュレーション的解析を加えた.“複数の釘からなる試験体のせん断耐力は、釘1本の耐力を本数分足し合わせることで表現できる”という前提のもと,乱数を用いた手法により,ASTMのP0.38累積頻度曲線を用いて、JASのP0.38累積頻度曲線を再現した.このように,上記推察の妥当性を数値解析的考察により示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では2つの標準的方法で試験を実施した.得られた試験結果からせん断性能評価結果の違いを考察した.また,成果を学会大会で発表した. これらは初期の計画に合致したものであることから,”おおむね順調に推移している”と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,さらなる異なる試験方法による釘接合部のせん断評価を試みる. これまでと同様に,異なる試験方法によるせん断性能の評価結果を比較し,加えて,その違いが現れた原因を考察する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額の13676円は,物品購入時における価格の変動によるものである.明細書を鑑みると,当初の計画どおりの予算執行が行われた.この次年度使用額は,翌年度での試験実施における物品の購入費に充てる予定である.
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Research Products
(1 results)