2019 Fiscal Year Research-status Report
釘接合部の試験方法の違いが評価結果に及ぼす影響 -実験的検証とメカニズムの解明-
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18K14504
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小川 敬多 静岡大学, 農学部, 助教 (10805021)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 釘接合部 / 木質構造 / せん断性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,試験方法の違いが評価結果に及ぼす影響を明らかにすることも目的にしている.平成30年度ではASTM記載の方法とJAS記載の方法で試験を実施し,両者の結果を比較したが,令和元年度ではこれに壁体試験体(木造軸組工法住宅の許容応力度設計に記載されている方法)で試験を行った. 壁体試験体は,スギの軸材(柱材.梁材,土台材)に構造用スギ合板を張り付けて作製した.使用した構造用合板の大きさは910×1820mmであり,壁体の寸法スケールはおおよそ幅1m×高2mであった.釘はおおよそ50本使用した.この試験体に対してラッキング試験機を用いて面内せん断力を作用させた.得られた壁体のせん断荷重-変形角関係から,既往の研究成果を参考に,釘1本あたりの荷重ー変位関係を計算した. 試験終了後の壁体試験体から木片を切り出し,ASTMおよびJASに記載されている釘接合部試験体を作製し,せん断試験を実施した.すなわち,壁体での試験方法とASTM,JASの試験方法での結果を比較するために,供試材料の物性値(密度等)が及ぼす影響を排除している.ここで得られたASTMおよびJASの試験方法での結果を,壁体試験体を用いた試験で得られた結果を比較した. いずれの試験体においても,荷重およそ0.6 kN周辺で降伏し,1.0~1.2 kNで最大荷重に至った後に,荷重が横ばいになる傾向を示した.試験方法で比較すると,JAS試験体に比べて,ASTM試験体ではその挙動にばらつきがみられた.また,試験終了時の変位に注目すると,ASTM,JAS試験体に比べて壁体試験体はすべての試験体が破壊時の変位が小さくなった.具体的には,ASTMでは平均25.8mm,JASでは28.8mmで破壊に至ったことに対し,壁体試験体では19.7mmで試験体が破壊した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度では,これまでの2種類の試験方法に加えて,壁体試験体でのせん断性能評価を行うことができた.これは初期の計画に合致したものであることから,”おおむね順調に進展している”と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,せん断挙動に違いが現れた原因をより精査する.破壊性状の比較をはじめとした定性的な違いについて考察を深め,また,せん断特性値の比較をはじめとした定量的な違いについても考察を深める.加えて,試験方法による影響をより精確に評価するための追加の実験を行う.
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた研究発表が新型コロナウイルス感染症の影響で中止となり,それへの計上分が残った。次年度ではさらなる追加の成果発表に向けて,その費用とすることを計画している。
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Research Products
(4 results)