2019 Fiscal Year Research-status Report
乾燥における水分・温度履歴が木材の力学特性の経過に与える影響
Project/Area Number |
18K14505
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
鳥羽 景介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10709322)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 木材乾燥 / 乾燥履歴 / 力学特性 / 平衡含水率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、木材の乾燥過程や使用環境において想定される温度・湿度条件の変化が木材の含水率や力学特性に与える影響を明らかにすることを目的としている。 当該年度では、温度条件の異なる乾燥履歴を与えた各種木材試験片を作製した後、引張試験、曲げ試験、ねじり試験を行った。引張試験では、ヤング率や引張強度に対して乾燥履歴の影響があまりみられず、乾燥履歴を重ねても同程度であったことがわかった。曲げ試験においても同様の結果であったが、荷重‐変位線図の形状、および試験片の破壊箇所の結果において乾燥履歴の影響が認められた。すなわち、乾燥履歴の際に昇温を伴った処理条件では、最大変位が小さかったのに対し、乾燥履歴の際に昇温を行わなかった処理条件では、最大変位が大きくなる傾向が認められた。乾燥履歴の際の温度条件が木材の脆性・靭性に寄与している可能性が示唆される。また、曲げ試験における破壊個所の観察から、乾燥履歴を重ねたことで試験片に対してせん断力が生じやすい箇所で破壊が起きやすくなること、およびこの傾向は乾燥履歴を与えた際の温度条件とは関係ないことがわかった。同様の傾向は、ねじり試験においても認められた。すなわち、乾燥履歴を重ねたことで、せん断弾性係数、および最大トルクが乾燥履歴の際の昇温に関係なく減少したことがわかった。乾燥履歴の影響が引張試験や曲げ試験のヤング率でみられなかったのに対し、ねじり試験のせん断弾性係数でみられたことから、乾燥履歴の影響は木材の耐せん断力への寄与が大きいと考えられる。一方で、昇温を伴わない乾燥履歴の影響による木材の靭性化などのメカニズムは不明であり、解明に向けて引き続き検討を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乾燥履歴を与えた木材試験片に対して各種力学試験を順調に行い、データの収集を行うことができたため。また、次年度に計測を予定している木材試験片の準備も順調に行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づき、木材の乾燥によって起こる材内の残留応力等の発生状況を調べる。乾燥履歴によって生じる力学特性の変化の原因についても並行して調べる。
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Causes of Carryover |
当初、研究成果発表や研究会参加等、出張を要する実験の実施のために支出を予定していたが、新型コロナウイルスの影響拡大のため、出張自粛や学会等の中止といった事態が生じ、予算の執行を見合わせることとなった。余った金額については、次年度、新型コロナウイルスの終息時期を見極めたうえでの出張の実施、または物品等の購入に充てる予定である。
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