2020 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental study on effect by different prey for copepod ecology and physiology
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18K14506
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松野 孝平 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (90712159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動物プランクトン / 植物プランクトン / カイアシ類 / 脂肪酸組成 / 摂餌 / 再生産 / 極域 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、本研究に関連する研究成果として、査読付き論文6報、査読無し論文2報、学会での口頭及びポスター発表11件(全てオンライン)を行った。以下に成果の概要を記述する。 令和元年のJAMSTECみらい北極航海中に採集したカイアシ類の脂肪酸組成を解析したところ、種および食性ごとに体内に蓄積している脂肪酸の組成が変化していることが分かった。詳細に解析すると、陸棚域に優占する北極海産カイアシ類Calanus glacialisでは、同時期の同種・同発育段階内であっても地点による大きな変化が見られた。脂肪酸組成は、摂餌の履歴と判断できるため、脂肪酸組成の海域差は、海域による餌生物(珪藻類や渦鞭毛藻類などの植物プランクトン分類群レベル)の差を反映していると考えられる。このことから、本種の摂餌戦略は日和見的であることが示唆される。興味深いことに、太平洋産種のEucalanus bungiiの脂肪酸組成も、地点による変化が大きいため、北極海産種と同様に日和見的な摂餌戦略を有していると考えられる。また、船上実験で測定した消化管色素量に基づく摂餌速度と脂肪酸量を比べると、油球を体内に多く蓄積している個体は、摂餌速度が低く、反対に油球蓄積が進んでいない個体ほど摂餌速度が高いことが明らかとなった。このことから、本研究課題で注目していた外因的な要因(餌の種類)だけでなく、内因的な要因(油球の蓄積度合い)によって、摂餌行動が変化することが示唆される。 別途行った2017および2018年夏季の北部ベーリング海で採集した試料の分析により、海氷衰退時期が早まると、植物プランクトンブルーム発生が遅延し、カイアシ類の再生産が遅くなることを明らかにした。これらの摂餌および再生産に関する知見は、種の分布域が変化することによる生態系および物質循環への影響評価に資する点で重要である。
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Research Products
(20 results)