2019 Fiscal Year Research-status Report
魚類の体温調節時における外界との熱交換メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K14513
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 乙水 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 助教 (60774601)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 外温性魚類 / 体温 / 心拍数 / 体温調節 / 熱交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
外温性魚類は外界の水温を使って体温を調節しているが、冷水中で失った体温を回復する際には熱の交換が活発になるなど、なんらかの生理的な調節によって外界との熱の交換を調節していることが示唆されている。仮説としては、「鰓が熱交換器として働いており、血流や海水の流量を変化させることで熱の交換を調節している」ことが考えられる。そこで、生きた魚に体温調節が必要な温度環境を経験させ、動物搭載型記録計を用いて魚の体温、心拍といった生理情報を計測する飼育実験を行った。 今年度は、昨年度にコバンザメ類のナガコバンを用いて実施した飼育実験と同様の実験をブリ属のブリとヒレナガカンパチを用いて行った。対象魚に体温と心拍数を記録するデータロガーを装着し、飼育水温(20℃)と低水温環境(15℃、10℃、5℃)を交互に経験させ、体温と心拍数の変化を記録した。各魚種2回ずつ実験を実施し、ブリ2回、ヒレナガカンパチ1回で心拍数が計測できた。心拍数は定常状態で60bpmだったが、低水温環境では20bpm以下、その後の飼育水温中での体温回復期には100bpm以上まで上昇し、その時の体温ではなく体温の変化状況と相関が見られた。体温変化と水温から熱収支モデルを用いて全身熱交換係数の変動を推定したところ、全身熱交換係数と心拍数には相関が見られたが、冷える時と温まる時で1.2倍程度の違いしか見られなかった。また、対象魚の死体に同様の水温変化を与えて全身熱交換係数を推定したところ、生きた状態より2桁小さくなり、体液循環の存在が外界との熱の交換や体内での熱の伝導を上昇させることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画通りに、対象魚に生きた状態で体温調節が必要な温度環境を経験させて体温、心拍数を計測することができた。また、死んだ状態と比較をすることで、熱交換における体液循環の影響が大きいことが確認できた。 得られた成果を学会で発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
魚の生活スタイルによって熱交換の調節能力が異なる可能性が考えられるため、活発な鉛直移動を行うことで多様な水温環境を経験しないような魚種でも同様の実験を行うことで、心拍数と熱の交換の関係についてもっと情報を得る。 野外での心拍数の計測も試みることで魚が能動的に温度環境を選択した時にどういった反応をするかを調べる。また別に、野外の魚から得られた水温・体温データについて、本研究で得られた心拍数と熱交換係数の関係から熱交換の調節能力を検証する予定である。
|
Research Products
(1 results)