2020 Fiscal Year Research-status Report
イカ類の性分化、性成熟における生殖腺組織構築及びGnRH作用メカニズムの解明
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18K14521
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
村田 良介 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 助教 (40809159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 温度 / 性決定 / 不妊化 / 性特異的遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
カミナリイカの生殖腺性分化に伴う脳内GnRH発現変動に関するデータを論文に纏めてGeneral and Comparative Endocrinology誌に発表した。 カミナリイカの性分化に及ぼす水温の影響を明らかにするために、産卵直後の受精卵を18°C~30°Cまでの5段階の水温下で育成し、孵化後の生殖腺性分化への影響を組織学的に調べた。その結果、どの水温群においても概ね1:1の性比を示したことから、本種の性決定・性分化への水温の影響は少なく、遺伝的要因による厳密な性決定が行われることが示唆された。水温の上昇に伴い孵化日数が短くなり、孵化後の脳内GnRH遺伝子発現量が上昇する傾向が見られたことから、本種のGnRHは性分化への関与は低く、生殖機能以外の孵化前後の初期発達に関与している可能性が示唆された。一方、18°Cの場合は孵化率が極端に低下すること、孵化した後も成長が著しく遅延し、生殖腺発達も遅延することが分かった。さらに本種の不妊化を目的として、産卵直後の受精卵を0°C処理することによる生殖腺への影響を調べたが、孵化率が10%以下まで低下し、孵化した個体の生殖腺は対照個体と比べて差のない分化・発達を示したことから、本種は初期発生期間の低温に弱く、魚類において実施されているような低温処理による不妊化の適用は難しい可能性が考えられた。 孵化後50日目の性分化直後の卵巣、精巣のトランスクリプトーム解析を実施し、性特異的遺伝子の探索を行なった。その結果、いくつかの性特異的因子と生殖細胞マーカー候補因子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 イカの性成熟におけるGnRHの関与解明と性成熟関連因子の探索が未実施であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
1 カミナリイカは非繁殖期には捕獲が難しいことと、孵化した稚イカを性成熟に達するまでの長期間育成、飼育することが非常に困難であることが分かったため、今後は性成熟メカニズム解明のモデル生物を非繁殖期でも野外から捕獲可能なアオリイカに変更して実施する。未熟個体と成熟個体の血リンパ液、及び脳において発現するタンパク質をSDS-PAGEにて解析し成熟関連因子、もしくは成熟抑制因子の網羅的探索を実施する。その際、既に作成済みのGnRH特異抗体を用いてGnRHの成熟への関与も調べる予定である。
2 カミナリイカ稚イカを用いて、昨年度実施したトランスクリプトーム解析の結果得られた性分化関連候補因子、生殖細胞マーカー候補因子の性分化に伴う発現局在変化をIn situ hybridization法により明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により昨年度参加予定であった学会等が中止になったことに起因する。繰越した予算は今年度開催予定の学会参加費用に充てる。
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