2018 Fiscal Year Research-status Report
比較ゲノミクスから読み解く熱帯性魚類の月齢同調産卵制御機構
Project/Area Number |
18K14523
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
竹内 悠記 琉球大学, 理工学研究科, 博士研究員 (00754904)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 月齢同調産卵 / 時計遺伝子 / 月周性 / ハタ |
Outline of Annual Research Achievements |
月齢同調産卵魚は月の満ち欠けに応じた月光照射時間の周期的変化を情報源に月齢を認知すると考えられる。時計関連遺伝子の発現と月光の関連を調べた先行研究では、概日時計の構成因子である時計関連遺伝子が、月光情報を体内に取り込んだ際の内的因子の役割を担っていると考えられるとともに、砂時計型タイマーによる時間計測機構によって産卵月齢を認知するモデルが提唱された。本研究は、異なる月齢で月齢同調産卵を行うマハタ属の近縁2種に着目し、時計関連遺伝子の発現変化に月光が与える影響の種間比較から、砂時計型タイマーを用いた産卵月齢認知モデルの一般性について検証する。さらに、両魚種のゲノム配列の比較から、月齢同調産卵が異なるタイミングで起きる仕組みを追及し、月齢同調産卵のより詳細な分子機構に迫ることで、月齢認知に関わる時間計測機構の普遍性と多様性を明らかにする。 本年度はヤイトハタとカンモンハタ2種の全ゲノム配列の解読を試みた。Illumina Hiseqによるショートリードシーケンス、およびOxford Nanopore Minionによるロングリードシーケンスを組み合わせたHybrid assembleを試みており、カンモンハタでは9907本のscaffoldからなる約941Mbpの全ゲノムアセンブリー(N50=177360)を得ることができた。ヤイトハタは十分なカバレッジのショートリードシーケンス取得は完了しており、現在ロングリードシーケンスの取得中である。 さらに本年度はハタ2種におけるにおける概日時計遺伝子の月齢応答性を調べるため、夜間に月光を遮断した条件下で飼育した魚の脳を採取した。また、月光情報の伝達にメラトニンが関与しているのか調べるため、新月の夜にメラトニンを注射した魚の脳も採取した。現在これらの時計遺伝子発現量について解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ハタ2種からインタクトなゲノムDNAの精製と高い質のショートリードシーケンスの取得ができた。また、ロングリードシーケンシング作業も順調に進んでおり、アセンブル作業も順調に進んでいる。時計遺伝子の月光応答性についての解析も、順調にサンプリング作業を完了することができたことから、今後も問題なく解析を進めていくことができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
全ゲノムシーケンスについては、ヤイトハタのロングリードシーケンシングを完了させ、ドラフトゲノムのアセンブルを目指す。また、カンモンハタですでに得られたドラフトゲノムの精度をより上げるために、ロングリードシーケンスのカバレッジをさらに上げ、より長いゲノムアセンブルの取得をを試みる。加えて、現在までに取得できたドラフトゲノムから時計関連遺伝子の転写調節領域の配列情報を取得し、発現レポーター解析を行っていく。 時計遺伝子の月光応答性については、本年度にサンプリングした試料の解析を進めるとともに、人工月光条件下における魚の飼育およびサンプリングを試み、先行研究によって提唱された砂時計モデルの検証を進めていく。
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