2018 Fiscal Year Research-status Report
温帯ウナギと熱帯ウナギの交雑を通じてウナギ属魚類の大規模回遊への進化機構に迫る
Project/Area Number |
18K14526
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
須藤 竜介 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 主任研究員 (60722676)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱帯ウナギ / ニホンウナギ / オオウナギ / 交雑種 / 交配 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、熱帯ウナギと温帯ウナギの交雑および遺伝学的解析を通じて、ウナギ属魚類の回遊の大規模化の機構を明らかにすることを目的としている。まず、実験に使用するウナギの種類を選定し、温帯ウナギは充分な飼育実績があるニホンウナギを使用し、熱帯ウナギはニホンウナギと産卵場を共通に持ち、八重山諸島や奄美列島にも生息しているオオウナギを材料とすることを決めた。 オオウナギの雄の採集を鹿児島県奄美大島の河川にて実施した。電気ショッカーにより採集を試みたところ、10尾のオオウナギを得ることができた。 得られたオオウナギをウナギ組換え生殖腺刺激ホルモンで催熟させたところ、10尾中5尾で精子が得られた。ニホンウナギの雄に関しても同様に催熟させ精子を得た。また、天然の雌のニホンウナギはサケ脳下垂体抽出物にて、催熟させた。 精子は人工精奨で30倍に希釈し、交配するまで冷蔵庫で保存した。ニホンウナギ雌を最終成熟ホルモンの投与後に排卵させ人工交配を実施した。人工交配はオオウナギの雄4個体の精子と雌のニホンウナギ1個体を用いた1対4の交配と、1個体の雄のみの精子を用いた1対1交配の2パターンの交配を実施し、交雑種を得た。また、1対4交配で用いた雌に関しては4個体のニホンウナギの雄の精子を用いて人工交配を実施しニホンウナギを作出した。 得られた交雑種およびニホンウナギの仔魚はふ化後5日齢から10Lのボウル型の水槽に移送し、7日齢から給餌を開始させ、飼育を継続している。 また、オオウナギの精子の一部は凍結精子を作製し、今後戻し交配ができるような基盤を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は温帯ウナギと熱帯ウナギの種間交雑家系の遺伝学的な解析から、「ウナギの回遊を大規模化のメカニズム」に関して明らかにすることを目的としている。初年度は、熱帯ウナギと温帯ウナギの交雑種第1世代(F1)を作出することを目標にしていた。 採用初年度は、奄美大島でのサンプリングを実施し、熱帯ウナギであるオオウナギが採集できた。さらに得られたオオウナギの雄の催熟を実施し、一部は凍結精子を作製し、戻し交配ができる体制を整えた。 次にニホンウナギの雌を催熟させ、雄のオオウナギと雌のニホンウナギと1対1交配および1対4交配を実施し、交雑種の作出に成功した。また、同じ雌に由来する1対4交配から得られたニホンウナギも同時に作出した。得られた仔魚は、飼育を実施し、現在までに大きな問題も無く飼育できている。 以上、一連のサンプリングおよび実験から交雑種の作出また比較群のニホンウナギの作出が出来ているため、本年度の研究は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は交雑種第2世代(F2)の作出に向けて作出したF1仔魚の飼育を実施することを目標とする。また、偽戻し交配を実施する可能性があることを鑑みて、新たにオオウナギをサンプリングする予定である。 F2の準備段階で、交雑種と交雑種と同腹のニホンウナギの仔魚期間飼育成績を比較する。比較項目は、成長と生残および変態までの仔魚期間である。この比較により、交雑種の種苗としての適性を検討する。シラスウナギへと変態しクロコへと発達した交雑種は、半分を雌性ホルモンを加えて餌で飼育し雌化し、半分は通常に飼育し雄にする予定である。 オオウナギのサンプリングは、前年度と同様に奄美大島で実施予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度はオオウナギの採集を天候や河川状況等が予測不可能であったため複数回のサンプリングにも充分な予算を計上していたが、1回のサンプリングで十分量のオオウナギを確保出来たため、差額が生じた。
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