2018 Fiscal Year Research-status Report
Economics of network and family in rural Turkey
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18K14530
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
草処 基 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90630145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トルコ / 社会的ネットワーク / 社会規範 / 家族の経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
途上国の農村社会に住む人々は、社会的ネットワークを利用して経済活動を営んでいる(ネットワークの経済学)。農村社会の規範もまた、家族内の労働配分など、個人の厚生に直結する経済活動に影響を与えている(家族の経済学)。社会規範の強い農村においてネットワークが世帯の厚生に与える影響を評価するためには、社会規範を考慮した包括的な分析が必要である。本研究は、伝統的に家父長制家族制度を有し、かつ、社会的ネットワークが農村内の農家・労働者階層の形成や階層間の雇用契約に大きな役割を果たしていると考えられるトルコ共和国アダナ県の農村社会を対象とする。家計調査を実施し、ネットワークの経済学と家族の経済学の二つの視点を統合させた実証研究を行うことにより、社会的ネットワークの多寡が、社会規範のもとで農村世帯の生計戦略や農村内の不平等に及ぼす影響を包括的に評価する。 2018年度は、調査地域において社会的ネットワークや家族制度が実際の農家行動と密接に関係しているのかどうかを確認することを目的として、現地で予備的調査を行った。調査においては、ネットワークの形成が不十分でかつ家父長制家族制度の影響を受けやすいと考えられる若手農業者の状況を把握するために、若手農家支援政策の受給者に対して聞き取りを行った。調査においては、支援政策の情報源、支援政策への申請理由、支援後の家族全体の農業経営・農家経済の状況変化、支援後の自身の能力及び農家経済全体に果たす役割の変化等について聴き取りを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワークの形成が不十分でかつ家父長制家族制度の影響を受けやすいと考えられる若手農業者の状況を把握するために、予備調査として2018年の9月に若手農家支援政策の受給者に対して聞き取りを行った。調査においては、支援政策の情報源、支援政策への申請理由、支援後の家族全体の農業経営・農家経済の状況変化、支援後の自身の能力及び農家経済全体に果たす役割の変化等について聞き取りを行った。 調査の結果、ネットワークの形成状況により情報の取得源が異なっていること、女性受給者の農業経営への関与の在り方に家父長制の影響が見られることなどの示唆を得ることができた。 予備調査実施時点では、次年度以降の調査方針として、若手農家を中心にサンプルを収集する方向性を検討していた。しかし、若手農家支援政策の受給者の絶対数が少数であるために、統計分析に十分な数のサンプルを収集するためには農業省との連携が必要となるが、政策の変更や人員の配置換えなどにより協力体制を継続的に構築することにはリスクが伴うことが、予備調査実施後の2019年3月にアダナ県を訪問した際に行った研究協力者とのミーティングで明らかになった。このため、次年度以降は調査対象者を限定しない形で調査を行うこととした。調査対象の変更が必要になったものの、予備調査で得られた知見は、次年度以降に行う本調査における調査票の作成に資するものであり、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、以下の計画で研究を進めていく。まず、2019年度中にトルコのアダナ県の灌漑地域において家計調査を実施し、以下の内容についての情報を収集する。 ①階層の形成:アダナ県の灌漑農村地域では、大規模農家層と移住者を中心とした農業労働者層に階層が分化しているが、移住者の中には農地を獲得し農業経営者となる者も存在する。移住者が農家として定着する過程に着目し、移住先でのネットワークの形成と、農地市場へのアクセスにネットワークが果たす役割について情報を収集する。② 労働契約:アダナ県の農業労働市場は季節雇用労働市場と年雇用労働市場に大きく分けることができる。季節雇用労働市場では仲介人が大きな役割を果たしているが、年雇用契約の多くは仲介人を通さないため、農家・労働者間のネットワークが季節雇用に比べより重要となると考えられる。農家・労働者間のネットワークを季節労働者と年雇労働者で比較するための情報を収集する。③生計戦略:家長の女性労働に対する態度を数値化することを目的として、イスラムに基づく社会規範や家父長制への意見についてのデータを収集しする。 2019年度には、女性労働に対する社会規範が農村の民族・階層構成に依存せず一般性をもっているかを検証するために、移住者が少なく農業労働者層が形成されていないアダナ県の天水農村地域でも家計調査を実施する。 上記の家計調査によるデータ収集を用いて、3つの項目に関する分析を進めていく。まず、2018年度から2019年度にかけて灌漑地域で収集したデータを用いた分析を行い、2019年度には天水地域で収集したデータと比較することにより灌漑地域で得られた結果の特殊性と一般性を検証する。
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Causes of Carryover |
当初は現地で2週間程度の調査を行う予定であったが、代表者を含めた日本側の研究者と現地の研究協力者の間での日程調整が難しく、1週間程度の調査にならざるを得なかった。次年度は、翌年度分として請求した助成金を合わせて、調査期間を当初の計画よりも延長して実施する。
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Research Products
(2 results)