2020 Fiscal Year Research-status Report
農業の組織経営体における組織経営能力と経営成果の関係性の解明に関する研究
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18K14536
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
河野 洋一 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (80708404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 組織能力 / 雇用型経営 / 経営者能力 / 従業員能力 / 人材育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては,地域内の同一営農類型において所得の平均以上を確保している経営体における組織能力の特徴と能力形成の実態を明らかにすることを目的とし,十勝管内に存立する肉牛生産農家の,経営者(役員),従業員の能力の相互作用としての組織能力の解明を目指し,調査・研究を実施した。 調査事例とした有限会社A牧場は十勝地域で約1,500頭の肉用牛を生産する農業法人である。調査結果より,組織構成員の適切な役割分担について,A牧場では,採用前から経営者・役員等の客観的評価を実施し,採用後についても客観的評価手法を基に,単年度毎に従業員の役割を決定し,従業員の能力や意向に応じた役割分担が実施されている。 また,組織構成員の適切な能力形成については,現在,雇用している従業員は採用時に未経験者であったが,事業部制組織でのOJTや定期開催される全体ミーティングなどを充実させることで人材育成および能力形成の促進に取り組んでいる。また,各部門における業務の情報共有を全組織構成員がSNS等を活用して把握することで,経営および作業に関わる課題の効率的な発見が可能となっている。 まとめとして,A牧場では,従業員の採用時から,現時点での組織構成員の能力構成を念頭に置いた人事計画が実施されており,採用後についても,毎年の面談で,各従業員の能力を評価し,その評価に適した役割分担を実施していることがわかった。能力形成においては事業部制の組織を形成していることから,主に担当部門内でのOJTと全体ミーティングでの能力形成を促している。これらの取り組みの成果として,経営環境の改善,牛舎内環境の改善(発情発見率の向上,受胎率の向上,死廃率低下等),取引先増加,販路拡大,加工品開発などがあり,組織構成員の適切な役割分担・能力発揮が経営成長に大きく貢献していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症対策によって,学内外の研究活動が制限されており,2020年度においては、当初計画していた研究計画を大きく変更したことで,進捗に遅れが出ている。具体的な理由として,①調査先への訪問・長期滞在による参与観察法を用いた組織能力の把握については,オンライン調査により,経営者,従業員に対する個別調査への変更をしたことにより,当該研究課題への従事時間が延長してしまったこと,②対面調査の受け入れが可能な経営体であっても,インタビュー調査の人数制限を設けて調査を実施する必要があったため,調査期間の変更等が発生したこと,などがある。また,③道外出張が困難であったことや,道外の調査先からの調査受入時期の延期などの依頼があったことで,当初計画していた道外調査が困難になったため,進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
各段階における新型コロナウイルス感染症における各種対策の今後の状況が,現時点で明確になっていないため,道内・道外問わず,オンラインでの調査が実施可能な調査対象者との調整を実施している。なお、2020年度での研究内容の変更,それにともなう進捗状況の遅れの発生により、研究期間の延長も検討中である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策により,出張を伴う学内外での研究活動が制限されたこと,また,調査対象者より訪問を避けてほしい旨を伝えられたためオンライン調査等への切り替えを実施したこと,特に,北海道外への出張が厳しく制限されていたことから,旅費交通費等での使用が出来なかったため,次年度使用額が発生した。 次年度使用額については,従前の研究計画にある現地でのインタビュー調査から,質問紙の郵送調査やweb調査への変更を検討しており,そのための経費として使用する。また,研究遂行上,不可欠なインタビュー調査については,オンラインミーティングの設備が整っていない調査先にノートパソコンやwebカメラなどを郵送することで,調査を実施することも検討しており,それらの実施に必要な機器の購入費や郵送費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)