2020 Fiscal Year Research-status Report
地域産業クラスターとしての産地形成と農業・農村復興に向けた研究
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18K14537
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
則藤 孝志 福島大学, 食農学類, 准教授 (80739368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子力災害 / 東日本大震災 / 営農再開 / 水田農業 / 集落営農組織 / 産地形成 / 地域づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目にあたる2020年度は、当初計画では最終年度として実証的調査研究の継続と論文作成、3年間の成果のとりまとめを予定していたが、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の影響を受けることとなり、研究計画の変更を余儀なくされた。現地調査の回数は最小限に留め、エントリーを済ませていた国際学会(ヨーロッパ農業経済学会、2020年8月、プラハ)も中止となった。とくに国内外の研究者との意見交換を通して理論的知見を深めることが困難となったため、研究期間を一年延長することを前提として、勤務地(福島市)に比較的近い地域を対象とした現地調査と論文作成に注力した。以下ではその成果の概要を報告する。 2020年は東日本大震災から10年にあたる節目の年であった。福島県の原子力被災地域にとって10年は通過点であり、いまも環境とコミュニティの再生、生活の再建、そして地域産業と農業の復興に向けた人々の挑戦は続いている。このような現在進行形の復興の現場において本研究テーマである食と農を基軸とした地域産業クラスターの形成がどこまで進んでいるのか、これからの10年の課題は何か、これらについて原子力被災12市町村(避難指示が発令された自治体)の双葉郡川内村、南相馬市小高区において調査を実施した。川内村の調査では震災後に導入されたハウスブドウの産地形成(クラスター形成)の現状と課題に接近し、南相馬市小高区では、水田農業の営農再開とそれを主導する農業法人の展開とネットワーク形成について調査を行った。これらの成果は、2つの関連学会において震災10年をテーマにしたシンポジウムで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の影響により、研究計画の変更を余儀なくされたが、勤務地(福島市)に比較的近い地域を対象とした調査研究においてはおおむね順調に進めることができた。双葉郡川内村と南相馬市小高区を対象とした調査ではそれぞれ貴重なデータや知見を収集することができ、震災10年の現状を描くだけでなく、今後の10年を展望する考察を行うことができた。その成果は日本協同組合学会の大会シンポジウム、および東北農業経済学会の大会シンポジウムにて報告するとともに、その内容をベースとした論文を学会誌に投稿することができた。さらに『くらしと協同』(くらしと協同の研究所)や『農村と都市をむすぶ』(全農林労働組合)といった専門誌に上記調査に基づく論考を寄稿することができた。以上から、研究計画変更後の研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を一年延長したことにより2021年度が本研究の最終年度となる。2020年度は新型コロナウイルス感染症(Covid-19)への対応として、勤務地(福島市)に比較的近い地域を対象にした調査研究に注力し、そこでは震災10年の節目における農業再生と新たな産地形成の実態に迫ることができた。これらを通して、本研究課題である原子力被災地における地域産業クラスターとしての産地形成の重要性や可能性を明確にできたと考えている。また次の10年における現場の課題もある程度確認することができたが、そこから次の研究課題を見出せるよう、最終年度はこれまでの成果をとりまとめていく。そこでは福島県における地域産業クラスターの形成に向けた現場の動きを引き続き調査するとともに、学会や研究会での報告を通して、地域産業クラスターの理論やフードシステムの分析枠組みについて改めて検討し、次の研究課題につなげたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の影響を受けることとなり、研究計画の変更を余儀なくされた。次年度も遠方への調査や学会発表は制限される見通しであるため、旅費の支出は最小限に留め、主には発表論文の印刷(別刷)に使用する予定である。
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