2020 Fiscal Year Research-status Report
韓国における農村コミュニティビジネスの形成条件と経営戦略に関する研究
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18K14541
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
李 裕敬 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80736281)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 農村コミュニティビジネス / ソーシャルビジネス / 経営戦略 / 信頼関係 / パートナーシップ / 組織間関係 / 農業法人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,韓国の農村におけるコミュニティビジネスを営む農業経営体の形成メカニズムについて,経営戦略の視点から分析するとともに,地域の多様な主体との関係性の分析に基づき農村コミュニティビジネス(以後,農村CB)の成立条件を明らかにすることを目的としている。今年度は,前年度に現地調査で得たデータの分析に加え,文献調査を行った。農村CBが発展を遂げる際,事業主体が行政,住民など利害関係者といかなる関係を構築したか相互間の信頼関係に着目して検証を行った。その結果,CBの成長過程における関係主体間のパートナーシップは,導入期の主体間関係は主に「契約への信頼関係」から「能力への信頼関係」に移行していた。また,成長期では事業実績を積み上げ,その功績により受賞されたことで,行政機関及びマウル住民からの信頼が高まり,その結果,行政機関から追加的な補助金を獲得し,マウル住民からも追加出資の希望が集まり,増資が得られた。さらなる成長期には,施設や体験コンテンツの充実にともない売上高を着実に伸ばし,地域住民を対象に福祉事業に着手し,行政からCBの優良事例として認められるようになった。これらは「能力への信頼」から「好意的信頼」への進化であると推察される。なお,こうした発展プロセスを辿ることができたのは,構成員の事業を開始・運営していく過程で当事者意識が芽生えたこと,マウル住民と円滑なコミュニケーションをとり,配当という形で事業収益を還元したことで信頼関係を築き上げたこと,事業収益金の一部に加え,断続的に公的資金を活用しつつ,様々な福祉事業を展開し,地域貢献を行ったことが挙げられる。これらは当初の事業目的であった雇用創出から,さらに地域の福祉問題にまで,事業運営者とマウル住民に問題意識が醸成され,その解決に向けて取り組んだことによるものである。なお,本研究の成果は学会誌により発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
国内において韓国の学術論文データベースを用いて,韓国国内の農村コミュニティビジネスに関する先行研究の探索・収集を行うとともに,現地の有識者にコンタクトをし,直近の関連制度や経営体の動向などの情報を入手し,それに合わせて現地で配布する予定の調査票を設計した。しかし,世界的なコロナウィルス感染症の拡大影響により,今年度は所属研究機関の命により海外渡航が一切禁止されたため,予定していた現地調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施する予定だった韓国の現地調査を2021年度に実施する予定である。ただし,コロナウィルス感染状況次第と見込んでいる。現地に渡航することができない事態に備え,現地の調査機関に代行調査を依頼できる体制を整えておく予定である。調査データが確保でき次第,データ分析と内容を取りまとめ,学会などで研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
計画していた海外現地調査がコロナウィルス感染症拡大により,海外渡航が禁止されたため,予定通りの調査を実施できず,本調査を次年度に繰り越すことになった。次年度(2021年)に,コロナウィルス感染症が終息し,海外渡航が許可されるようになれば,計画している現地調査を実施することで今年度未使用額を執行する予定である。また,海外渡航が困難な状況が続いた場合,現地の調査機関に代行調査を依頼することも計画している。
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