2019 Fiscal Year Research-status Report
ソシオテクニカルシステムアプローチを取り入れた次世代農村計画手法の開発
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18K14544
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鬼塚 健一郎 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90559957)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 集落機能 / シミュレーション / スマート農業 / 地域おこし協力隊 / ソーシャル・メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな目的は、ソシオテクニカルシステムアプローチを取り入れ、地域社会とICTの最適なバランスにより集落機能を維持・回復させる新たな農村計画手法を確立することである。平成31年度(令和元年度)には、前年度に行った調査・整理に基づく集落機能を構成する指標の調査・整理に基づいて、「地域とICTの将来動向を踏まえたシミュレーションによる地域の持続性評価モデルの構築」を目指した。具体的には、以下の3つの視点から調査・分析を行った。
1)京都府内の全条件不利集落を対象として、統計データに基づいて集落機能の維持に必要な要素をロジスティック回帰分析を用いて分析した。その結果、各年齢層、各性別の人口データと農業従事者データにより、80%を超える精度のモデルを構築できた。さらに、そのモデルをもとにしてシステムダイナミクスモデルを構築し、将来的な人口構造の変化に基づく集落機能の維持状況の変化の予測を行った。集落支援者を導入した場合に、集落機能の維持がどの程度向上するかについても分析を行った。以上により、これまでにはみられなかった政策形成上重要な評価手法を開発することができた。 2)農林水産省によるスマート農業実証事業を実施している京都府亀岡市保津町を対象として、特に稲作に関する様々な先進的なスマート農業技術・機械の調査を行うとともに、地域住民のスマート農業に対する意識や将来の農業継続意向等についてアンケート調査を実施した。その結果、農業継続意向が比較的低く、将来は農業法人に農地が集積・集約され、スマート農業で少人数により農業が実施される予測結果が得られた。 3)全住民数4名の京都府綾部市古屋地区を対象として、ソーシャル・メディアやマスメディアの利用が、外部支援者を呼び込み、集落機能を維持する効果について、人的交流面と経済面からデータを収集し、効果の解明を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である、地域社会(人)とICTの最適なバランスにより集落機能を維持・回復させる新たな農村計画手法を確立することである。令和元年度は、人口減少や高齢化により減少を続けている集落機能を維持するための要素として、人については外部支援者、ICTについてはスマート農業、ソーシャル・メディアに着目して、それぞれの影響を分析したほか、人についてはシステムダイナミクスによるシミュレーションモデルの作成にまで至ることができた。これは、当初の研究計画と照らし合わせてもまったくそん色なく、順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、大きく以下の3点に基づいて検討する。
1)令和元年度の研究で踏み込めなかった点として、京都府の全条件不利集落を対象としたシステムダイナミクスによるシミュテーションモデルについて、地域おこし協力隊といった外部支援者(人)による補完要素については考慮したが、ICTの要素を組み込むことができていない。令和2年度は、ICTによる集落機能の補完可能性を組み込んだシミュレーションモデルへとアップデートし、ICTの技術進歩予測に基づく複数シナリオに基づいて、人とICTの双方による集落機能低下の補完効果の将来予測の実施に重点を置く予定である。 2)上述のシステムダイナミクスはマクロ的なシミュレーションモデルであるのに対して、亀岡市保津町では、単体の地域を対象として、各住民による農業就業意図やスマート農業への意欲といったミクロの要素を組み込んだ、ミクロレベルのシミュレーションを実施する予定である。 3)ミクロレベルのシミュレーションについてはもう一つ、綾部市古屋地区でのソーシャル・メディアによる集落機能補完効果(外部者による人的サポートの促進効果)についても実施する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が0より大きくなっているのは、当該年度までの旅費が当初の予定よりも大幅に少なかったためである。理由として、調査地が近かったこと、データ収集にかかる旅費がオンラインや学術イベント等での交流により得られたこと、望ましい国際会議がなかったことが挙げられる。残額については、次年度に国際会議への参加と、シミュレーションソフトの購入に使用する予定である。
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