2019 Fiscal Year Research-status Report
降雨浸透水による応力条件と堆積構造に着目した斜面崩壊発生機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
18K14546
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
木村 匠 琉球大学, 農学部, 准教授 (10794498)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | すべり面の強度 / 降雨浸透 / 堆積構造 / リングせん断 / 斜面崩壊発生機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年7月の九州北部豪雨災害では,3時間で約300から400mmの激しい降雨により,変成岩,花崗閃緑岩等からなる地質の谷壁で多くの崩壊が発生した。本研究では,多様な地質・土質背景を有し,急斜面での表層崩壊が多かった本災害を事例として,現地調査,室内実験等に基づき,崩壊の発生機構を検討するものである。平成31年度(令和元年)は以下の研究活動を実施した。 災害地において,(1)斜面の地質・土質に関する現地調査と室内実験用試料の採取,(2)室内実験(物性,透水性,リングせん断)の一部を実施した。(1)現地の緊急対策工事の状況を考慮しながら昨年度設定した,変成岩地帯の奈良ヶ谷川と花崗岩地帯の乙石川の主要な斜面について,室内実験用試料の採取を行った。また,花崗岩地帯の斜面で新たに滑落崖までアクセスが可能になった斜面においても試料採取を進めることができた。なお,今年度は特に,リングせん断試験用の不撹乱ブロック試料の採取を中心に進めた。(2)両地質地帯における透水係数は,透水性が「中位」から「低い」に位置付けられた。奈良ヶ谷川斜面では,地表面付近で自然含水比50-60%となり,透水性が高く,地表面から2m以内で自然含水比が20-30%に低下し,2桁の透水性低下が認められた。乙石川斜面では,地表付近の自然含水比が10-20%で,地表から3m以内で自然含水比が5-10%と低くなり,透水性は1桁程度高くなった。奈良ヶ谷川斜面の滑落崖試料について,有効垂直応力100kN/m2の下で行ったリングせん断試験により完全軟化強度約40°を得た。急な斜面勾配と整合し,斜面崩壊発生メカニズムの解明の鍵となる数値が得られた。また,変成岩地帯の不撹乱ブロックについて,X線CT分析によって片理構造が捉えられ,不撹乱ブロックのせん断実験のために役立つ情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度(令和元年度)の実施計画に基づいて,昨年度から続いている現地の緊急対策工事の進捗を考慮しながら斜面からの試料採取を進めて,採取試料についての室内実験を実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,これまでの採取試料の室内実験を中心に研究活動を進める。室内実験と現地調査の結果を取りまとめながら,追加調査や追加試料が必要な場合には現地調査を実施する。特に,不撹乱ブロックは限られた個数で実験するため試料数が不足する可能性があり,追加調査の際の優先順位を高くする必要がある。
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