2018 Fiscal Year Research-status Report
圃場整備前後の三次元地形解析による地下水湿性が原因の湿害リスク予測
Project/Area Number |
18K14549
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
清水 裕太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 研究員 (50625829)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 湿害 / 地形 / 地下水 / 水田輪作 / 中山間 / 圃場整備 / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
中山間地での水田輪作においてダイズ・ムギ作付け時に生じる発芽不良等の湿害が問題となっている。 本研究は、水田転換畑における湿害を回避するため、圃場整備前後の地形解析および土壌の調査を行うことで、集落スケールでの水田転換利用適地マッピングを行う。具体的には、湿害が著しい中山間地域の水田において、(1)圃場整備前後に撮影された空中写真から三次元地形モデルを構築し、地形解析から圃場整備に伴う地形改変箇所と地下水の水みちを推定し、(2)地形改変が著しい数カ所の圃場において、土壌水分、地下水位等の計測と比抵抗電気探査による地下での水の動きを計測することで地形改変箇所と湿害との関係を明らかにし、(3)集落スケールでの水田転換利用の適地マッピングを行う。圃場整備に伴う地形改変がダイズ・ムギの湿害に影響を及ぼしていることが明らかになれば、集落スケールでの水田輪作の適地不適地の分布、暗渠施工等の排水対策の重点箇所が集落スケールで空間的に把握できるようになり、調査コストおよび対策コストを大幅に削減することに寄与する。 中山間地の水田輪作における畑作物の不均一な湿害の原因を解明するため、広島県中山間地の棚田を対象に、圃場整備前後の地形解析および圃場での土壌水分、地下水位の観測、土壌調査、電気探査による地下構造の調査を行った。対象とした農業集落内の現圃場の多くは、切土および盛土によって造成されていた。観測を行った棚田三筆では、盛土箇所で地下水位および土壌水分が高く湿害が発生しやすい状態であった。一方、切土箇所では降雨時でも地下水位は低く、土壌水分は好適な状態であった。土壌調査および電気探査の結果、切土箇所は粗孔隙が多い風化花崗岩からなる地山層が作土層下にあり、透水性の高い砂層を水みちとして流下したことが切土箇所の排水性が高かった要因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水田圃場整備前後の地形を再現するため、二時期分の空中写真画像データをもとに、三次元写真測量ソフトウェアを用いて、三次元地形モデルを作成した。初年度のダイズ作およびコムギ作時の作土層の土壌水分動態を把握するため、土壌水分センサー、水ポテンシャルセンサー、地下水位計を一筆内に高密度に設置し、継続的に計測した。電気探査により、圃場地下に想定される水みちの流路の発見、圃場整備時の切土盛土工による地下構造の把握、および地下水と作土層との水のインタラクションを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた結果の普遍性を検証するため、同様の条件を持つ棚田十数筆において同様の調査を行い、今年のダイズ作およびコムギ作時の湿害発生状況との対応を確認する。構築した圃場整備前の地形モデルおよび既存の水文統計データを用いて、現在の水みちを流れる地下水の平均流量を推定し、地下水による湿害が生じうるリスクを評価する。農業集落内の棚田を対象にした湿害リスク個所をマッピングし、輪作適地ゾーンを分類するためのデータを収集する。
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Causes of Carryover |
現有の研究資源を有効に使い、研究費を効率的に使用した結果生じたものであり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために有効に使用する。
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