2018 Fiscal Year Research-status Report
脂質輸送機構を介したアルボウイルスの節足動物内輸送と垂直感染機構の解明
Project/Area Number |
18K14576
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
西山 祥子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (90817058)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ネッタイシマカ / 2本鎖RNA / ノックダウン |
Outline of Annual Research Achievements |
(遺伝子ノックダウン用のdsRNAの合成)蚊は最も遺伝子解析が進んでいるネッタイシマカを使用する事とした。ネッタイシマカの脂質輸送蛋白質関連因子として、8遺伝子を選出した。これらに対する2本鎖RNA (dsRNA)の合成に加えて、ノックダウンにより形質変化を示す事が報告されているorphan nuclear receptor HR3遺伝子の dsRNAを人工的に合成した。 (培養細胞を用いた遺伝子ノックダウン実験)ネッタイシマカ由来の培養細胞(ATC-10)を用いて、遺伝子のノックダウン実験を行なった。上記8遺伝子の中、ATP合成酵素βサブユニット遺伝子のみACT-10細胞内でも安定して発現している事が明らかとなった。上記で作成したATP合成酵素βサブユニット遺伝子のdsRNAをATC-10細胞に遺伝子導入した。陰性対照としてGFPのdsRNAをトランスフェクションした。ATP合成酵素βサブユニット遺伝子の遺伝子発現をリアルタイムPCRで解析した所、陰性対照と比べて1/4に減少している事が確認された。これにより、dsRNAはノックダウンを行う機能を有する事が示された。 (生体への蚊のノックダウン実験)蚊の胸部にdsRNAを注入し、接種後3日の蚊を解析した。一部のヴィテロジェニン遺伝子は吸血後でのみ発現が誘導されるため、ヴィテロジェニン解析群ではdsRNA接種後24時間の蚊に吸血させた。dsRNA接種後24時間の蚊を観察した所、飛行能力が低下し、衰弱している様子が認められた。実験終了後まで生存していた蚊からRNAを抽出し、定量PCRを用いて解析を行なった所、標的遺伝子がノックダウンしている事を確認する事ができた。今後、脂質輸送蛋白質をノックダウンした蚊にウイルスを感染させ、更なる解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅延の理由として以下の2点が挙げられる。1点目は北海道大学から岐阜大学に研究の場を移したため、研究環境を整えるのに時間を必要とした。また、2点目として岐阜大学は大規模改修中であり、引っ越し作業により実験が行えない期間があった。しかし、共同研究者の保有するネッタイシマカの遺伝子発現状態を解析し、遺伝子のノックダウンには成功しており、感染実験を進める準備は完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質輸送蛋白質をノックダウンしたネッタイシマカにウイルスを感染させ、ネッタイシマカ内のウイルス分布を解析する事で、脂質輸送で重要な輸送蛋白質を推定する。また、上記の結果をもとに、特定の脂質輸送蛋白質を蚊に由来する培養細胞で発現させ、ウイルスとの結合を免疫沈降で解析することで、ウイルスの輸送に重要となる脂質輸送蛋白質を特定する。
蚊に蛍光色素を付加した脂質輸送蛋白質を注入し、その後、ウイルスを感染させる。ウイルス結合脂質輸送蛋白質が生殖細胞に局在する脂質輸送蛋白質の受容体に結合するか組織学的に解析する。ウイルス結合脂質輸送蛋白質が脂質輸送蛋白質の受容体に結合しているかを明らかにする。 上記で明らかになった脂質輸送受容体を阻害する抗体を蚊に注射し、ウイルスの垂直感染率の変化を解析する。脂質輸送受容体のウイルス垂直感染における役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験の遅延のため支出を一部繰り越すこととなった。遅延の理由として1点目は北海道大学から岐阜大学に研究の場を移したため、研究環境を整えるのに時間を必要とした。また、2点目として岐阜大学は大規模改修中であり、引っ越し作業により実験が行えない期間があったためである。次年度は本格的に感染実験を始めるため、今年度使用予定であった実験器具や遺伝子・蛋白質解析試薬が必要になると考えられる。
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