2018 Fiscal Year Research-status Report
in vivo imaging of immune responses to influenza virus in mouse lung by using two-photon excitation microscopy
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18K14580
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植木 紘史 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (70794907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザ / 生体イメージング / 2光子励起顕微鏡 / 好中球 / 感染 / 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスの病原性には、宿主免疫応答によって惹起される肺の炎症が関与すると考えられているが、その詳細については十分に明らかになっていない。特に、生体内における免疫系の細胞動態については不明な点が多い。植木らはこれまでに2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングシステムを構築することで、生きたマウスの肺を細胞レベルで可視化することに成功している。本研究では、生体イメージング法を用いて、インフルエンザウイルスに感染した肺を観察し、従来の組織学的な解析では得ることのできなかった免疫系の細胞動態という免疫応答の新たな知見を得ることを目指している。平成30年度の検討において、以下の結果を得ている。 インフルエンザウイルスに感染したマウスの肺における好中球の運動性、遊走する好中球の数、血管の透過性、血流速度の変化などを生体イメージングシステムを用いて観測し、独自に開発した解析アルゴリズムを用いて、新たな病態生理学的なパラメーターとして定量化解析を行った。その結果、インフルエンザウイルスの感染によって、肺の血流速度や好中球の運動性が低下することが明らかとなった。さらに、病原性の異なるウイルス株として季節性インフルエンザウイルス(H1N1)ならびに高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)を用いて、その宿主応答の違いについて解析した。高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した肺では、季節性インフルエンザウイルスに比べて好中球の呼び寄せられるタイミングが早くその数も統計学的に有意に多く、また血流速度の低下も早期に起こることから、早期に強い宿主応答が誘導されていることが明らかとなった。さらに、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した肺では血管透過性の亢進が顕著に認められ、組織障害が激しく起こっていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、生体イメージング法を用いてインフルエンザウイルス感染下のマウス肺を観察し、免疫細胞の挙動の解析を行うものである。好中球は感染初期に炎症部位に遊走し生体防御の最前線を担う免疫細胞の一種である。インフルエンザウイルスに感染した肺に遊走してくる好中球を計数すると、季節性インフルエンザウイルスと高病原性鳥インフルエンザウイルスのどちらにおいても、感染初期に一過性に好中球の数が増加することが明らかとなった。これらの好中球の挙動は、好中球の遊走に関与するケモカインであるMIP-1α,MIP-2、KCが感染肺において発現し始めるタイミングと相関していた。さらに、マウスの肺における好中球の動きを詳細に解析すると、低速(≦50 μm/秒)と高速(>50 μm/秒)の2つの運動を繰り返しながら移動することが明らかとなった。インフルエンザウイルスに感染したマウスでは、低速で好中球が移動する頻度が非感染マウスと比べて増加することで、好中球の移動速度が低下していることが示された。好中球の運動性の変化には、細胞膜表面に発現する接着因子の発現が変化していることが示唆され、感染局所での好中球の応答の変化を反映しているものと考えられる。これら好中球の運動性の変化は、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した肺で顕著に認められた。このように、インフルエンザウイルス感染肺における好中球の細胞挙動の変化を観察することに成功しており、さらにこの変化がインフルエンザウイルスの病原性と相関することを見出すことができたことから、本研究課題は順調に遂行してきているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、研究実施計画に従って検討を行う。特に、好中球の移動速度などの細胞動態の変化が顕著に現れる感染後のタイミングに着目し、解析を進める。FACS法を用いて好中球をエンリッチメントし、RNA-seq等で遺伝子発現解析を行う。得られた遺伝子発現プロファイルの中から、非感染と感染肺および病原性の異なるウイルス株間で大きく変動し、接着因子やサイトカインなどの免疫系の細胞応答に関与する遺伝子に着目する。さらに、これらの分子を標的とした中和抗体や阻害剤を用い上述の解析で得られた免疫動態に与える影響についても検討を進める。また、好中球以外の免疫細胞についてもインフルエンザウイルス感染下においてどのような細胞挙動を示すか、生体イメージング法を用いて知見を集める。
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