2018 Fiscal Year Research-status Report
野生復帰個体の創出を目標とした「新規採食エンリッチメント」の開発と実践
Project/Area Number |
18K14590
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
土田 さやか 中部大学, 創発学術院, 特定講師 (40734687)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 希少動物 / 共生腸内細菌 / 毒素分解細菌 / 採食エンリッチメント / プロバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
採食エンリッチメント技術に、野生の採食物を取り入れる場合、それらを分解・消化できる腸内細菌をプロバイオとして給与することが対応策として有効であると考えられる。本年度の研究で、飼育ロリスから宿主特徴的であると考えられるビフィズス菌を分離した。16S rRNA遺伝子を用いた系統解析の結果、分離されたビフィズス菌2種は、いずれも既存の種とは異なる新種であることが示唆された。加えてロリス(樹液・昆虫食)に特徴的なビフィズス菌と、ヒト(穀物食)に特徴的なB. catenulatum及びゴリラ(果実・葉食)に特徴的なB. moukalabenseの生理性状を比較したところ、野生の主要な採食物の樹液主成分であるアラビアガム及び、昆虫に含まれるキチンに関しては、ヒト由来ビフィズス菌がほとんど分解できないのに対し、ロリス及びゴリラ由来ビフィズス菌は分解能を持つということが明らかとなった。このロリス特徴的ビフィズス菌が、野生の餌に依存する採食エンリッチメントを行う際のプロバイオとして有力な候補菌株である可能性が示唆された。 また飼育ロリスは、これまで糖質の多給を原因とする口腔疾患の多発が報告されてきた。そこで本種飼育個体の歯垢から分離された細菌種がどのような構成であるかを調査した。16S rRNA遺伝子を用いた系統解析により、ロリスの歯垢には大腸菌及び、歯周病に関連すると考えられる偏性嫌気性菌8菌種(Peptostreptococcus stomatis, Prevotella intermedia, Anaerocolumna cellulosilytica, Bacteroides thetaiotaomicron, B. fragilis, B. heparinolyticus, B. ovatus, B uniformis)が含まれることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育個体からの腸内細菌及び口腔細菌の分離を複数回実施することができ、プロバイオ候補菌を複数株得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き飼育及び野生ロリスの共生腸内細菌の分離を進めるとともに、それらの生化学性状、特に糖資化性や毒素の分解を確認する。また、ロリス特徴的な細菌種に関しては全ゲノム解析を実施し、遺伝形質の確認を行う。
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Causes of Carryover |
野生ロリスの生息地である東南アジア渡航を予定していたが、現地カウンターパートの事情により、延期になったため。次年度は1回以上の渡航を予定しており、野生ロリスのサンプル採取を行う予定である。
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