2019 Fiscal Year Research-status Report
分娩移行期の消化管ホルモン動態は乳生産と健全性に関係するか?ー酪農現場での検証ー
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18K14593
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
福森 理加 酪農学園大学, 獣医学群, 講師 (60721694)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳牛 / 消化管ホルモン / 消化 / ルーメンアシドーシス / 炎症 / エンドトキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
乳牛は分娩前の低エネルギー飼料から分娩後には高エネルギー飼料に急激に切替るため、亜急性ルーメンアシドーシスなどの消化器障害に陥りやすい。一方で飼料変化を小さくするとケトーシス等のエネルギー不足に起因する疾病に罹患しやすくなる。本研究では消化管ホルモン分泌を人為的にコントロールすることによって分娩後の飼料変化に対する適応能力を高めることを目的に試験を行った。本研究ではGLP-2分泌促進作用を持つ酪酸塩サプリメントを高デンプンまたは低デンプン飼料に添加し、消化管ホルモン分泌、消化率を評価した。また、人為的に穀類として蒸煮圧ペントウモロコシを単回給与し、ルーメン内のエンドトキシン濃度を高め、血中へのエンドトキシン移行や炎症反応を評価した。結果として、血漿GLP-2濃度は高デンプン飼料に酪酸塩を添加した際に上昇した。酪酸塩の添加によって血中BHBA濃度が上昇したが、ケトーシスを発症する程度ではなく採食量の減少もみられなかった。また、酪酸塩の添加によって乾物および有機物消化率が増加した。穀類の単回投与後にルーメン内エンドトキシン濃度の上昇に伴う血中エンドトキシン濃度や炎症物質の上昇は見られなかった。以上のことから酪酸塩添加は乳牛のGLP-2分泌を高めて消化率を増加させることが明らかとなった。これはGLP-2や酪酸塩自体の腸管上皮細胞の増殖作用によるものであることが推察された。同時に、GLP-2や酪酸塩は腸管上皮のタイトジャンクションを強めエンドトキシンの消化管から血中移行を抑制する効果を期待していたが、本研究でこれらを明らかにすることは出来なかった。令和元年度から、この部分について再度検討をしており現在も解析中である。 また、本研究では乳牛の分娩前後の消化管ホルモン分泌動態と分娩後の周産期疾病の発生状況、乳量との関係性を明らかにするための追跡調査を引き続き行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年から乳牛の分娩前後の消化管ホルモンの分泌動態と乳量、疾病との関係性を追跡調査している。また、腸管成長促進因子あるGLP-2分泌を人為的に高めるために飼料中に酪酸塩を添加し飼養試験を実施した。この試験は既に実施済みであり、成果を国際学会および学術雑誌で発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年調査していた酪酸塩添加による消化管ホルモン分泌のコントロールと腸管の強化作用について引き続き解析を進める予定である。昨年は、これまで報告されているプロトコールにならい穀類の単回投与をおこなってルーメンアシドーシスを誘引したが、血中のエンドトキシンや炎症物質濃度の上昇がみられなかったことから十分でなかったことが推察されるため、方法を見直して酪酸塩による腸管の抗炎症作用を検討することを計画した。また、分娩前から分娩後44週まで乳牛群の追跡調査を行い、血液、乳汁を採取するとともにボディコンディションスコア、乳量や疾病、繁殖状況を追跡調査している。今年度はこれらデータを解析し、分娩前後の消化管分泌が乳牛の健康や乳量にどの程度関係しているかを解析する予定である。
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Causes of Carryover |
前年度と同様に動物実験を行うために物品、謝金およびその他(分析外注費)の支出を行う予定である。
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Research Products
(8 results)