2020 Fiscal Year Research-status Report
イヌとヒトの比較オミクスを活用したヒト脱分化脂肪細胞の生理活性物質による神経分化
Project/Area Number |
18K14594
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中野 令 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (60755619)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経リプログラミング / ヒト脱分化脂肪細胞 / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経組織の障害は、永久的な運動・感覚機能障害を引き起こし、重篤な場合は死に至る。近年、幹細胞移植による中枢神経の機能再生が試みられているが、有効な治療法は確立されていない。本研究で、申請者は脱分化脂肪細胞に注目した。脂肪から得られ、生体外での増殖能を持つため、再生医療の細胞源として期待されている。しかしながら、脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングはヒトやマウスでも報告されていない。申請者は、イヌの骨髄間質細胞および脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングについて研究を進めてきた(Nakano et al., PLOS ONE, 2020, Nakano et al., PLOS ONE, 2015, Nakano et al., J.V.M.S., 2015, Nakano et al., A.J.V.R., 2013)。また、脳で発現するJNKサブタイプであるJNK3が神経リプログラミングに重要であることを明らかにし、総説を発表した(Nakano et al., Cells, 2020)。本研究では、ヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングの達成を目的として研究を行った。 前年度は、見出したヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングに関与する因子をベースにヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングシステムを開発した。今年度は、細胞の神経機能について詳細な検討を行った。カルシウムイメージングを行い、高濃度塩化カリウム刺激誘発性のカルシウム流入を確認した。また、神経伝達物質誘発性のカルシウム流入も確認した。今後は、さらに詳細な電気生理学的機能解析を行い、ヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングシステムを確立するとともに、メカニズム解明についても研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者らが開発したヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングシステムは、イヌ脱分化脂肪細胞で開発した成長因子を利用した方法よりも、再現性に優れており、実験を行うことが容易であった。また、細胞機能の検討ではカルシウムイメージングを用いることで、電位依存性カルシウム流入を確認した。さらに、神経伝達物質のスクリーニングを行うことで、神経リプログラミングシステムで誘導可能な神経細胞サブタイプの決定も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、カルシウムイメージングを用いた細胞機能解析を行い、神経細胞類似の電位依存性カルシウム流入や神経伝達物質への反応を確認した。今後は、電気生理学的機能解析を行い、活動電位形成について検討を進める。また、蛍光神経伝達物質類似物質を用いたイメージング解析を行うことで、神経細胞間の伝達機能を有するか否かについても検討を進める。
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Causes of Carryover |
本研究計画を進める上で予定よりもスムーズに進行できたため、当該助成金が生じた。次年度使用額は、翌年度として請求した助成金と合わせて神経リプログラミングメカニズムの詳細な細胞内シグナル伝達解析を明らかにするための実験消耗を購入するために用いる。
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