2021 Fiscal Year Research-status Report
CD103+樹状細胞の腫瘍局在促進による抗腫瘍免疫増強
Project/Area Number |
18K14598
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
守屋 大樹 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (30759759)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CD103+樹状細胞 / KikGRマウス / 腫瘍免疫 / XCR1 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍浸潤CD103+樹状細胞 (DC)は抗腫瘍免疫応答で腫瘍細胞を直接攻撃可能な細胞傷害性T 細胞(CTL)を誘導可能なサブセットである。このためCD103+DCの腫瘍内浸潤増加は、抗腫瘍免疫増強に繋がる可能性が高い。そして、腫瘍に留まるCD103+DCの腫瘍局在に使用する分子機構を解明できれば、CD103+DCの腫瘍局在促進に繋げられる可能性が高い。そこで紫色光照射により緑(KikGR-Green)から赤(KikGR-Red)に変換する光変換タンパク質KikGRを全細胞が発現するKikGRマウスを用い、腫瘍内に24時間留まったKikGR-Red CD103+DCに特徴的に発現する遺伝子の抽出を試みた。しかし、特徴的に発現する分子の抽出に至らなかった。一方で、腫瘍内に留まる別の免疫細胞と比較解析したところ、CD103+DCは他のミエロイド系細胞と比較して20分の1以下の存在比率であった。また、これまでの研究からCD103+DCは腫瘍辺縁に局在することが明らかとなっており、腫瘍中心部に浸潤できないため、存在比率が低くなっていることが考えられた。 CD103+DCの大部分はXCR1というケモカイン受容体を発現する。このためKikGRマウスに作成した腫瘍に紫色光照射し、一定時間後に腫瘍組織を回収した。その後、作成した切片に対し抗XCR1抗体による染色を実施し観察したところ、腫瘍中心部にもKikGR-XCR1+細胞が多数存在したため、腫瘍細胞にもXCR1分子が発現していることが想定された。また、培養腫瘍細胞を用いてフローサイトメトリーを実施したところ、XCR1の発現が認められた。 XCR1は細胞遊走に関与する分子であり、腫瘍の発現するXCR1がXCR1+DCの腫瘍中心部への遊走を妨げている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腫瘍に「留まる」CD103+樹状細胞が他のミエロイド系細胞腫と比較して少ないことについて、腫瘍側に発現する分子に着目し、解明を試みるように計画を変更したため。また、研究機関の移動で研究に使用するKikGRマウスの再導入、繁殖に時間を要したため。変更後計画に使用する技術等は習得済みで迅速に実施可能である。また、現在はKikGRマウスの繁殖も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から本研究で使用する腫瘍細胞株、MC38はケモカイン受容体XCR1を高発現することが明らかとなっている。CD103+DCの大部分もXCR1分子を発現し、細胞遊走に利用していることが知られている。CD103+DCは腫瘍周辺部に局在することから、腫瘍の発現するXCR1分子によりCD103+DCの腫瘍中心部への遊走が阻害されている可能性が考えられた。このため、RNA干渉などによりXCR1遺伝子発現を抑制し腫瘍細胞でのXCR1分子発現抑制を行う。加えてXCR1のリガンドであるXCL1を腫瘍内接種し、CD103+DCの腫瘍中心部への遊走増加も試みる。XCR1発現抑制MC38をKikGRマウスに接種、もしくはXCL1の腫瘍内接種した後、腫瘍に紫色光照射し、一定時間後のKikGR-Red CD103+DC細胞の細胞数について、フローサイトメトリーにて解析し、腫瘍浸潤増強の有無について解析する。また、紫色光照射一定時間後の腫瘍組織を用い、切片を作成しCD103+DCの局在解析を実施し、腫瘍中心部への遊走増強効果について検討する。 また、XCR1発現抑制MC38腫瘍への変更、XCL1腫瘍内投与もしくは併用時、腫瘍からCTL誘導の場である所属リンパ節 (dLN) へのCD103+DCの移行促進の有無についてKikGRマウスを用い、解析する。 本研究で使用するMC38は抗原として卵白アルブミン(OVA)を発現する。XCR1発現抑制MC38腫瘍への変更、XCL1腫瘍内投与もしくは併用時のdLN内のOVA抗原特異的CD8+T細胞について解析し、CD103+DCの腫瘍浸潤増強が抗腫瘍CTL誘導増強に繋がるか検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による影響、また研究機関移動による研究計画の変更があったため。XCR1遺伝子発現解析、および発現調節に使用する試薬およびXCL1の購入に主に使用する。
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