2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K14603
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 達朗 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80755554)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | IgE / PGD2 / skin |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギー性疾患の患者数は年々増え続け、いまや大きな社会問題となっている。アレルギー反応の基となる抗原特異的なIgE抗体の産生には、抗原提示細胞とTh2細胞、B細胞の三者間での物理的な接触と、抗原情報の受け渡しが必要である。しかし、抗原の生体内への侵入をきっかけに、いつ、どこで、どのようにこれらの複数種の免疫細胞が集まり、効率よくIgE抗体を産生するかは、明らかになっていない。本研究は、プロスタグランジンD2(PGD2)が、このIgE産生メカニズム果たす役割を解明することを目的としている。野生型マウス(WT)に卵白由来アルブミンであるオボアルブミン(OVA)を抗原とし、これをアジュバントとともに腹腔内投与(感作)すると、血清中のOVA特異的IgE値(OVA-IgE)が増加した。これと比較して、PGD2合成酵素(H-PGDS)およびCRTH2受容体の欠損は、OVA-IgE値を減少した。抗体産生の場であるリンパ節および脾臓におけるPGD2量を測定したところ、他の脂質メディエーターと比較してPGD2の産生量が最も高く、さらに感作後の各臓器ではこの量が顕著に増加していた。WTに蛍光標識したデキストランを腹腔内投与すると、これを捕捉した抗原提示細胞が脾臓で検出され、この数はCRTH2欠損マウスで減少していた。近年、皮膚から侵入した抗原が抗原特異的IgE産生を促し、再度抗原が体内に侵入するとアレルギー反応を引き起こす二重抗原曝露説が提唱されている。野生型マウスにOVAをアジュバント非存在下で皮膚に塗布すると、OVA-IgEが産生された。CRTH2欠損マウスに同様の操作を行うと、WTのそれと比較し低値であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、① PGD2 シグナルがアレルギー症状とIgE 産生に与える影響の検討:全体像の把握、② PGD2 シグナルによるIgE 産生促進機構の解明Ⅰ(組織レベル)を計画していた。2つの感作モデル(腹腔内投与および皮膚塗布)を用いて、PGD2のシグナル欠損(CRTH2欠損)がIgE産生量を減少させること、それと相関して抗原の投与により引き起こされるアレルギー症状(体温低下の程度)も減少することを確認した。さらに、CRTH2欠損マウスでは、抗原の投与経路に関わらず、抗原を最初に補足してリンパ節へ運搬する抗原提示細胞の動きが鈍いことも明らかにした。全体像を把握し、かつ、複雑なIgE産生メカニズムの中で対象とする細胞種を特定することができたことから、おおむね順調な進捗状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞レベルでのPGD2 シグナルによるIgE 産生促進機構の解明を行う。具体的には、H-PGDS やCRTH2 の欠損や薬物による阻害が、抗原刺激による抗原提示細胞やT 細胞の遊走とサイトカイン産生、B 細胞の増殖に与える影響ついて評価する。また近年、皮膚感作メカニズムにおいて、自然リンパ球(ILC2)やその活性化を担う液性分子(TSLP)、それを分泌するケラチノサイトや好塩基球の重要性が数多く報告されている。感作後のWTおよびCRTH2欠損マウスの皮膚組織におけるそれぞれの細胞の変化を検討し、PGD2シグナルとの関連性を検討する。
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