2019 Fiscal Year Research-status Report
世界初のオキシトシン受容体遺伝子改変平原ハタネズミの作製と共感性の神経基盤の解明
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18K14607
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢田 紗織 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (50733896)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オキシトシン / 共感性 / 自閉症スペクトラム障害 / 平原ハタネズミ / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オキシトシン(Oxt)が制御する共感性の神経回路の解明を目的としている。共感性は社会行動のために重要な精神機能である。近年、Oxtとオキシト シン受容体(Oxtr)が共感性や社会行動、精神疾患の社会性障害の病状理解や治療に強く関与していることが報告されており、治療薬開発のためにもOxt/Oxtr系 による共感性・社会性の神経制御機構の解明が求められている。本研究では、一夫一妻制という高い社会性を持ち社会行動モデル動物として近年注目されている げっ歯類の平原ハタネズミを主に使用する。平原ハタネズミは遺伝子操作が困難とされていたが、申請者らは随一の生殖工学技術とCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を応用することで遺伝子組換え(Oxtr KO)平原ハタネズミを作製することに成功した。遺伝子組換え平原ハタネズミは世界初の試みであり、マウスやラットより高度な社会性を示す新たなモデル動物として研究への多彩な応用が期待できる。昨年度は、作製したOxtr KO平原ハタネズミを用いて社会行動を主とした様々な行動試験を実施、解析した。その結果、Oxtr KO平原ハタネズミでは社会新奇性や固執性に異常が認められた[Horie et al. 2018]。また、Oxtr関連の新たな遺伝子組換え平原ハタネズミをCRISPR/Casで作製し、社会性・共感性行動に関与している脳領域を調べ、いくつかの脳領域が重要であることを特定した。本年度はこの脳領域を中心とした神経回路を調べ、3次元的な構造を解析することで行動と神経回路の関係を更に調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、共感性及び社会行動に重要な神経回路の解析を試みた。前年度作製したOxtr関連の遺伝子組換え平原ハタネズミを複数種類組み合わせて用いて、前年度に特定した社会性行動に重要な脳領域を中心とした投射元・投射先を特定にし、社会性の神経回路の一部を明らかにすることができた。この結果は日本神経科学会にて発表した。しかし本年度は研究代表者が妊娠・出産し、体調不良による休養や産休・育休の取得をしたため研究の進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者がまだ育休のため、次年度前半の進捗はほぼ期待できず、全体としても進捗は遅れることが予想される。次年度はこれまでのデータをまとめて論文投稿することを目指し、育休中に在宅で執筆を進め、復帰度に必要な残りのデータを集める予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の妊娠・出産に伴う体調不良による休養や産休・育休取得により研究進捗に遅れが生じた。そのため研究期間を延長申請し、助成金も繰越すこととした。次年度に育休より復帰した後、残りの助成金を使用して研究を進める予定である。
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