2018 Fiscal Year Research-status Report
ピンポンサイクル経路を駆動する新奇RNAヘリカーゼの機能解析
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18K14621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 僚 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00783870)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | piRNA / トランスポゾン / 生殖細胞 / RNAサイレンシング / RNAヘリカーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は研究代表者が新規同定したAgo3結合性RNAヘリカーゼであるDDX43について、生化学的な機能解析を中心に研究を遂行した。まず、DDX43をノックダウンしたカイコ生殖系培養細胞株BmN4からSiwi, Ago3をそれぞれ単離し、結合しているpiRNAの量を解析したところ、野生型細胞との相違は見られなかった。そこで、DDX43の詳細な機能を解明するため、RNA結合ドメイン及びATP加水分解に重要と想定される残基に変異を導入した組み換えタンパク質を調製し、試験管内実験系の構築を行った。次にBmN4からAgo3を単離・固相化し、標的RNAを切断させ、DDX43によるRNA解離実験を行った。その結果、野生型DDX43存在下でのみAgo3から切断産物の解離が観測され、各種変異体を用いた場合にはその活性が確認できなかった。また、in vivoにおけるレポーターアッセイ系の構築も行い、Ago3からSiwiへのRNA転移反応を検証したところ、DDX43ノックダウン細胞において転移反応が半分程度に低下していることが確認された。これらの結果は、DDX43がSiwi-piRNAの一次合成経路ではなく、piRNA増幅経路であるピンポンサイクルの駆動に寄与していることを示しており、ピンポンサイクル経路のモデルにおいて長年不明であった分子機構を明らかにするものである。 また、DDX43に対する抗体の作成も行い、複数種類の免疫原を投与したマウスを用意し、ハイブリドーマの創出を行った。スクリーニングの結果、ウエスタンブロットに用いることのできる抗体を複数種類取得することに成功した。今後は免疫沈降や蛍光免疫染色の条件検討をおこない、DDX43の細胞局在などを検証することで反応の場を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していた精製タンパク質を用いた試験管内実験系を構築し、野生型DDX43および変異体の活性を検証することに成功した。また、次世代シークエンサーによる解析によりピンポンサイクルの駆動活性を検証する予定であったが、よりAgo3からSiwiへのRNA転移活性を検証可能なレポーターアッセイ系の構築により、in vivoでのDDX43の活性を観測することが可能になった。DDX43の細胞内局在を観測するための抗体作成は抗原の検討・作成にやや時間を要したが、ハイブリドーマを作製することに成功した。これらの結果から、当初の計画からやや変更はあったが、概ね計画どおりに研究を遂行できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したDDX43抗体を用いた免疫沈降や細胞内局在解析を検討し、内在性DDX43に結合するPIWIタンパク質に結合するpiRNA量やその複合体の局在を検証する。また、DDX43の機能にはATP加水分解やRNA結合に関与すると考えられるドメインが重要であると示唆されたが、そのATP加水分解活性を生化学的に明らかにする。さらに、DDX43が乖離させたRNAがSiwiに取り込まれ、piRNAに成熟する過程を、試験管内再構築系を用いて検証し、より純粋な分子反応系でピンポンサイクル経路におけるDDX43の機能を明らかにする。これらの結果をまとめ、国際学術雑誌への論文発表を行う。
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Research Products
(4 results)