2018 Fiscal Year Research-status Report
脱ユビキチン化酵素USP8によるグルココルチコイド受容体活性化の新規制御機構
Project/Area Number |
18K14623
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
遠藤 彬則 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (50796844)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | USP8 / ユビキチン / エンドソーム / 炎症シグナル / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脱ユビキチン化酵素USP8によるグルココルチコイド受容体の新規制御機構を明らかにすることを目的としている。USP8はグルココルチコイド抵抗性を起因として発症するクッシング病の原因遺伝子であり、USP8によるグルココルチコイド受容体の活性制御機構を明らかにすることは、クッシング病発症機構の解明、そして、その治療法開発に繋がる重要な研究課題である。 2018年度に実施した研究から、USP8の機能阻害は、リガンド依存的なグルココルチコイド受容体の活性化を抑制するが、これまでグルココルチコイド受容体の活性化に重要だと考えられていた、細胞質における既知の複合体形成、核内移行、核内でのホモ二量体形成に与える影響は限定的であった。したがって、USP8は未知のメカニズムにより、グルココルチコイド受容体の活性を制御していることが示唆された。 一方、これらの研究を進めていく中で、USP8がコルチゾール関連遺伝子のみならず、多数の遺伝子の発現制御に関わっていることを新たに見出した。興味深いことに、USP8の機能阻害は、エンドソームへのユビキチンの凝集を始点に、炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を誘導する。このようなエンドソームへのユビキチンの蓄積が炎症シグナルを惹起する報告はなく、2019年度はこの表現型の解析を進める予定である。具体的には、USP8機能阻害により引き起こされるエンドソームへのユビキチンの凝集がどのように炎症性サイトカインの遺伝子発現誘導を誘導するのか、その新規細胞内シグナル伝達機構をプロテオミクス解析、ライブセルイメージング、ケモテクノロジーを駆使し、明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、USP8によるグルココルチコイド受容体の活性制御機構を明らかにすることを主目的とした。これまでにUSP8がグルココルチコイド受容体の細胞質における複合体形成、核内移行、核内でのホモ二量体形成に与える影響はわずかであることを示し、USP8が未知の制御機構によりグルココルチコイド受容体の活性を調節していることが示唆された。 その一方で、USP8の機能阻害が多数の遺伝子発現に大きな影響を及ぼすことを見出した。すなわち、USP8の細胞内機能の下流では、グルココルチコイド受容体のような特定の転写因子だけではなく、広範囲の遺伝子発現が制御されることを示唆している。そして、少なくともその中の一つが、炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導する炎症シグナルであることを既に見出している。特筆すべきことは、USP8機能阻害によりエンドソームに蓄積するユビキチンがこの炎症シグナルの始点として機能する点である。このようなエンドソームへのユビキチンの蓄積が炎症シグナルの開始点となる現象は、これまでに報告されていない。 以上のことから、研究開始時に設定した主目的とは別に予期せぬ展開とはなったものの、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果の中で、エンドソームへのユビキチンの蓄積が炎症シグナルを惹起する分子機構に着目して、以下のように今後の研究を進めていく。 1. USP8機能阻害細胞のエンドソーム上に蓄積するユビキチン化タンパク質の網羅的な同定 USP8機能阻害時にエンドソームに蓄積するユビキチン化タンパク質を質量分析法により網羅的に同定し、ある特定の基質タンパク質がエンドソームにユビキチン化されたまま蓄積するのか、あるいは非特異的な基質タンパク質が蓄積するのかを調べる。その解析結果を手掛かりに、エンドソーム上で炎症シグナルが走り出す分子メカニズムの解明を目指す。 2. 蛍光タンパク質を用いたライブセルイメージング USP8機能阻害時には、エンドソームへのユビキチン化タンパク質の蓄積とともにエンドソームの肥大化が認められる。そこで、エンドソームに局在するタンパク質とユビキチン結合タンパク質をそれぞれ、mCherryやGFPと融合させ、ライブセルイメージング解析を行う。これらの研究結果から、USP8機能阻害後にどのような時間軸でエンドソームの構造異常が起こり、ユビキチン化タンパク質が蓄積するのかが明らかとなる。
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Causes of Carryover |
研究代表者が年度内に他研究機関へと異動した。それに伴い研究遂行に遅れが生じたため、翌年度への繰り越しが生じた。これら遅延した研究は、翌年度に行い、当該助成金を使用する予定である。
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