2018 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質の翻訳を促進するレトロトランスポゾンSINEの作用機序の解明
Project/Area Number |
18K14631
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 葉月 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別任期制研究員 (20726012)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SINEの進化的保存機能の特定 / SINEUP結合タンパク質の同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
“SINEUP”は、ターゲットmRNAのタンパク質翻訳機能を促進する非コードRNAであり、 そこに含まれるレトロトランスポゾン遺伝子の“SINE”が、タンパク質翻訳機能を促進“UP”することから名付けられた。SINEは進化的に非常に保存度の高い遺伝子であり、tRNAと7SLRNAの2つの遺伝的起源をもちながら、進化している。類似配列が植物からヒトまで幅広いゲノム中に繰り返し発現しているが、多くが外来から寄生したガラクタDNAだと思われており、その機能はほとんど未知である。 多種の遺伝子から抽出したSINEの翻訳促進機能を比較し、結合する機能性タンパク質を解明することで、その翻訳促進に関わる進化的な保存機能および、その作用機序を明らかにするべく研究を行っている。 2018年度においては、当初計画通り、植物からヒトまでのSINEを抽出し、タンパク質翻訳機能をSINEUP-GFPをモデルに比較した。抽出したSINEの中で顕著にターゲットGFPmRNAの翻訳を促進したSINEをいくつか認めたため、相同性をもつ配列の比較や、RNAの2次構造の比較を行った結果、共通の配列がほとんど類似しておらず、またRNAの2次構造についても類似していないことを確認した。 上記の結果は、SINEUPの機能はSINE RNA単体が所持する機能というより、それを取り巻く細胞環境によって引き起こされているという当初の仮説が有力となった。そのため、平成30年度において、「SINEUPと一緒に翻訳に関わっている因子の特定」を実行するための準備を開始した。研究実施計画に示した、SINEUP結合タンパク質の同定方法の実験最適化を行い、質量分析法を用いて、抽出したSINEUP結合タンパク質の解析を行った。その結果、hnRNPなどの核-細胞質間輸送タンパク質、翻訳開始因子等がSINEUPに結合していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、当初計画通り、植物からヒトまでのSINEを抽出し、タンパク質翻訳促進機能を比較することを目的に研究を進め、タンパク質翻訳促進機能を有する新たなSINE、5つを選定することができた。また、それらSINE配列や2次構造の比較を行ったが、バイオインフォマティクスの技術では容易に類似点を発見できなかったため、こちらも当初計画の通り、結合タンパク質の同定を実施するための実験方法を開始し、確立した方法を用いていくつかの結合タンパク質を選定するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の進捗がおおむね順調に進展したため、当初研究計画通り、結合タンパク質の同定を行い、それらがSINEUPの機能に寄与しているかを今後確認する。その方法としては、同定したタンパク質の遺伝子に対するshRNAをデザインし、SINEUPの効果を比較する。 現時点ではマウスのSINEB2を含んだSINEUPに焦点を絞り、タンパク質の同定を進めているが、今後の課題としては、2018年度に選定した5つのSINEがSINEB2と同じタンパク質に結合しているかを確認する実験に焦点に置き、研究を推進する。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究計画に記載した、「SINEの同定」については期待以上の早さで効果のあるSINEが多く発見できた。そこで、同定の実験に使用予定であった遺伝子導入試薬および細胞培養試薬の使用量を減らすことができたため、次年度に繰り越すこととした。繰り越した経費については、当該年度に多く抽出したSINEについて、計画通り「結合タンパク質の同定」の研究に使用する予定である。
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