2019 Fiscal Year Research-status Report
X線結晶構造解析によるミトコンドリアトランスロケータSAM複合体の構造基盤
Project/Area Number |
18K14640
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
竹田 弘法 京都産業大学, 生命科学部, 学振特別研究員 (80816588)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / トランスロケーター / クライオ顕微鏡構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、当初 ミトコンドリアトランスロケーターSAM complex 構成タンパク質の X線結晶構造解析を目的としていたが、これらを単独で精製することができなかったため、SAM complex の最も高次な複合体である、SAM-Mdm10 supercomplex のクライオ電子顕微鏡による構造解析に変更した。SAM-Mdm10 supercomplex は、αヘリカル型膜タンパク質の膜挿入に重要なタンパク質複合体である。 2018年度では、SAM-Mdm10 supercomplex の大量精製に成功し、さらにクライオ構造を分解能4.0 angstrom で決定することができた。しかし、部分分解能が低く、モデリングが困難であった。 2019年度では、モデリングに十分な分解能を目指して、様々な条件検討を行った。具体的には、grid 角度、Fab 抗体を用いたサンプル調製 (千葉大学村田研究室との共同研究)、Cu grid から Au coating grid への変更 (東京大学濡木研究室との共同研究) などである。その結果、Au coating grid への変更により、分解能が 2.8 angstrom まで向上した。さらに、Nanodisc に再構成した SAM-Mdm10 supercomplex を Au coating grid を用いてクライオ測定したところ、こちらも分解能が 2.9 angstrom に上昇した。その結果、SAM-Mdm10 supercomplex のモデリングが完了し (東京大学濡木研究室との共同研究)、 構造決定に至った。現在、ミトコンドリアを用いた機能解析を行っており (フライブルク大学 Pfanner 研究室との共同研究)、完了次第、論文を投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的は、ミトコンドリアトランスロケーターSAM complex の各構成タンパク質の X 線結晶構造解析を行うことで、その精密構造を決定すること、さらに光架橋解析により各構成タンパク質がどのように相互作用するかを検証することであった。現在は、SAM complex に対してさらに Mdm10 が結合した SAM-Mdm10 supercomplex のクライオ構造を高分解能で決定することに成功し、光架橋解析をせずとも、各構成タンパク質の相互作用様式を明らかにすることができた。加えて、Mdm10 が SAM complex による β-barrel 膜タンパク質の膜組み込みに関与し、SAM complex と結合することで、膜組み込みを調節する分子機構を解明するに至った。また、Mdm10 自体が β-barrel 膜タンパク質であることから、SAM-Mmd10 supercomplex の構造は、SAM complex による β-barrel 膜タンパク質の膜組み込みが完了した状態を模していることを意味し、その構造を捉えたという点で、SAM-Mdm10 supercomplex のクライオ構造は重要な構造的知見となった。 以上の研究実績、本研究が当初よりも発展的でチャレンジングであることを踏まえ、2019年度時点での進捗状況は、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究テーマである、SAM-Mdm10 supercomplex の構造研究は、機能解析 (フライブルク大学 Pfanner 研究室との共同研究) を終えた時点で、完了する。そのため、研究テーマに、ミトコンドリアトランスロケーター TOM full complex の構造研究を追加する。準備状況として、TOM full complex を酵母のミトコンドリアから精製することに成功し、Nanodisc に再構成することで、クライオ測定で TOM full complex を観察するに至っている。しかし、粒子の7割近くが TOM core complex (2 pore) であることから、Nanodisc に再構成した後、TOM full complex (3 pore) のみを精製しなければならない。その方法として、stylene polymer による可溶化や、TOM full complex に重要な Tom20 の固定化・安定化に対して条件検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
本研究ではクライオ電子顕微鏡を使用しており、AMED (東京大学吉川研究室) に対して使用料を支払わなくてはならない。本研究は競争が激しいため、クライオ電子顕微鏡による構造解析を急がなければならず、前倒し請求申請を行った。しかし、当初の計画よりも速く良質なデータを得ることができたため、全ての前倒し費用を使う必要がなくなった。そのため、残った分の前倒し費用を、次年度使用額として申請することを希望している。
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