2019 Fiscal Year Research-status Report
ストレス環境における翻訳開始因子eIF2Bの活性阻害機構の解明
Project/Area Number |
18K14644
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
柏木 一宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60732980)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 翻訳調節 / 翻訳開始 / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
eIF2BによるeIF2のリン酸化状態の識別機構の解明を目的として、eIF2B-リン酸化eIF2複合体とeIF2B-非リン酸化eIF2複合体との構造比較を行った。その結果に関し、論文としての誌上発表と学会発表を行った。 さらに、eIF2のリン酸化によるeIF2B活性の阻害機構や、低分子化合物ISRIBによるeIF2B活性促進機構についてより詳細を理解するため、クライオ電子顕微鏡を用いてeIF2B-リン酸化eIF2複合体構造の分解能の改善を試みた。その過程で、eIF2Bに対しリン酸化eIF2が1分子だけ結合した複合体など、これまで得られていなかった新たな複合体構造を得ることに成功した。 これらの新規複合体構造の比較を行った結果、eIF2Bに対してリン酸化eIF2が順次結合していく過程で、サブユニットの相対配置の変化などのeIF2B側の構造変化がどのようにして誘導されてゆくのかについて、新たな知見が得られた。 興味深いことに、リン酸化eIF2の結合に伴うeIF2B側の構造変化はISRIB結合ポケットの形状変化を伴っており、2分子のリン酸化eIF2が結合したeIF2B複合体はISRIBを結合できないことが示唆された。このことから、ISRIBはeIF2Bに対してアロステリックな調節因子として作用し、リン酸化eIF2によるeIF2Bの活性阻害を阻止しているという新たな作用機序が提唱された。 これらの仮説に対し、生化学的な検証を試みるとともに、論文の執筆を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
eIF2-eIF2B複合体構造に関する論文を発表することができた。またその後の解析により、ISRIBによるeIF2Bの活性制御の新たな機構に関する知見が得られるなど、予想外の進展がみられた。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
eIF2Bの活性を向上させる薬剤であるISRIBの新規作用機序ついて、仮説の検証を行う。 また、eIF2-eIF5複合体に対するヌクレオチド交換反応の機構の解明のため、eIF2-eIF5-eIF2B複合体の調製法を確立し、構造解析を試みる。また、eIF2のリン酸化による阻害の解除機構について、ホスファターゼとの複合体の解析も標的とする。
|
Causes of Carryover |
多くの時間をクライオ電子顕微鏡のデータ解析に割いたため、消耗品等への出費が抑えられ、次年度使用額が生じた。次年度以降、新規構造解析標的に対する試料調製のための物品費に充てる予定である。
|
Research Products
(3 results)