2018 Fiscal Year Research-status Report
膜の品質管理機構の解明を目指す-細胞膜上の異常膜ドメインの解消機構の解析
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18K14645
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三岡 哲生 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (60754538)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リン脂質 / 出芽酵母 / 膜ドメイン / ホスファチジルセリン / ステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、出芽酵母のリン脂質ホスファチジルセリン(PS)合成酵素欠損株において発生する、膜タンパク質が分布できない巨大膜ドメイン"void zone"についての解析を行っている。void zone の発生機構やその構造、液胞を介した解消機構といった動態に関わる分子の同定を目標としている。本年度における解析で分かってきた主な知見を以下に述べる。 ①「PS欠損株では細胞内のステロール量が増えている」: ステロール特異的に結合するfilipinによる染色結果から、他の細胞膜領域に比べて void zone にステロールがより豊富に存在することが示唆されていた。そこでTLCによる脂質分析を行ったところ、PS欠損株では野生株よりもエルゴステロールが増加してることが分かった。しかしながら、void zoneがあまり多く発生しない30℃で培養したPS欠損株においてもこの増加は認められ、void zoneの発生率と細胞内ステロール量に直接的な相関は無いようであった。 ②「エルゴステロールとスフィンゴ脂質の合成がvoid zone形成に必要である」: 上記の結果からも予想されていたが、エルゴステロールの合成経路の遺伝子欠損をPS欠損株に加えると、void zoneの発生が顕著に減少することが分かった。またスフィンゴ脂質の合成に関わる遺伝子のいくつかの欠損変異もまた void zone の発生に必要であることが分かった。 ③「void zoneと接触する液胞膜領域の特殊性」: 細胞膜上に発生するvoid zoneにリソソームに相当するオルガネラである液胞が接触している様子が観察されていた。接触時の液胞について液胞膜タンパクの分布を観察したところ、void zoneと接触している領域には液胞膜タンパクが存在していないことが示唆され、特殊な膜ドメイン同士が接触しているという新たな可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PS欠損株で発生する膜ドメインvoid zoneについて、その発生や消失に係る分子や実験条件に新たな発見があり、これらの解析に時間を費やしているため、当初予定していた野生株やin vitroの系へ、解析を進展させるには更に時間を要することが予想される。しかしながら、得られてきた結果はvoid zoneの基本的な性質として興味深いものであるため、推進方策を少し変更して解析を引き続き行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
PS欠損株での解析結果を基に、野生株での異常膜ドメインやin vitroでの再構成までを視野に入れていたが、void zoneの基本的な発生・消失に関わる部分や、液胞との相互作用に興味深い性質が見出されてきたため、これらの基本的な性質の解析に注力し論文発表を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は旅費申請額と支出額の差にほぼ等しく、物品費に関しては適切に使用できたと思われる。翌年度は学会発表に加え、論文投稿も予定しているため次年度使用額の一部はこれらの費用に充てて研究を遂行していく。
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